「となり百姓」という言葉をご存知だろうか。
これは、田植えや草取りなどを隣がやったら、うちも次の日にやればよい、
という農民心理のあり様を示しているのだそうだ。
農業では、一日くらいの遅れはあまり問題にならない。
それとともに、自分で判断しなくても、隣に合わせておけば大丈夫、
という感覚も示している。
集団主義的「安心社会」といえるのかもしれない。
農家に限らず、戦後の日本社会では、大なり小なり、
「となり百姓」が通用したのではないか。
高度成長期が始まったあたりから、隣がテレビを買えば、うちも買う。
隣の子どもが大学に行けば、ウチの子も……と。
現在、経済成長著しい中国が、昔の日本と同じように
家電製品やクルマなどの耐久消費財を普及させている。
しかし、現代日本のわれわれ医師にとって手本にすべき隣とは誰なのか、何なのか。
そう考えてみると、「となり百姓」の意味も、
単なるアナロジーではすまなくなってくる。
『ディア・ドクター』という映画を観た親しい医師から、
次のようなメールが寄せられた。
この映画は、笑福亭鶴瓶演じる主人公・伊野医師が
ニセ医者ながら村人の心をとらえ、
コミカルに医療とは何かを問いかけるものだ。
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著者プロフィール
色平哲郎(JA長野厚生連・佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長)●いろひら てつろう氏。東大理科1類を中退し世界を放浪後、京大医学部入学。1998年から2008年まで南相木村国保直営診療所長。08年から現職。
連載の紹介
色平哲郎の「医のふるさと」
今の医療はどこかおかしい。そもそも医療とは何か? 医者とは何? 世界を放浪後、故若月俊一氏に憧れ佐久総合病院の門を叩き、地域医療を実践する異色の医者が、信州の奥山から「医の原点」を問いかけます。
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