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医師は働き過ぎ?

2009/08/04

 今年3月、東京都から総合周産期母子医療センターの指定を受けている愛育病院(東京都港区)が、管轄の労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受けた事件はメディアで広く報道されました。医療関係者でなくとも、ご記憶の方は多いのではないでしょうか。

 新聞報道などによると、愛育病院では、2009年1月と2月の2回にわたり労基署の立ち入り調査を受け、3月17日に医師らの労働条件を巡って是正勧告を受けました。同病院は労基署から、(1)労働基準法で定める時間外労働(月間45時間以内)の上限を守った上で、1日8時間の法定労働時間を超過した時間外労働については労働時間に見合った賃金を支払うこと、(2)8時間の労働後に1時間の休息を徹底すること、(3)時間外労働について職員団体と結んでいる協定(36協定)の不備を改善すること、(4)これらを就業規則へ盛り込むこと――といった指導を受けています。

 是正勧告を受けた当時、愛育病院には15人の産科医がいたそうですが、そのうち夜間勤務を担当している常勤医は6人。夜間勤務は常勤医と地域の非常勤医が1人ずつ、2人体制で行い、さらに医長以上の常勤医がオンコール(自宅)待機だったといいます。常勤医は月間5~6回の夜間勤務を担当しなければならず、時間外労働の上限を超えてしまったようです。

病院勤務医の労働時間は週70時間
 医師の労働環境を巡る報道が、最近とみに増えています。4月22日には、奈良県立奈良病院(奈良市)の産婦人科医2人が、夜間や休日の当直、自宅待機は時間外の過重労働に当たり、定額(2万円)の手当を支給するだけで割増賃金を払わないのは労働基準法に違反するとして、県に04、05年分の未払い賃金計約9200万円を請求した訴訟の判決がありました。奈良地裁は、当直については、「分娩など通常業務を行っている」と原告の主張を認め、手当ではなく割増賃金として、県に計1540万円の支払いを命じました(県は控訴中)。このほかでは、医師の過労死や、名ばかり管理職問題なども、度々報じられています。

著者プロフィール

木村憲洋(高崎健康福祉大学健康福祉学部医療福祉情報学科准教授)●きむら のりひろ氏。武蔵工業大学工学部機械工学科卒。国立医療・病院管理研究所病院管理専攻科・研究科修了。神尾記念病院などを経て現職。

連載の紹介

木村憲洋の「どうする?日本の医療」
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