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部下から意見が出ないのはナゼ?

2009/08/05

 組織の中で部下が上司に対して意見するには、結構なエネルギーが必要になります。ですので、上司としては、部下が意見を言いやすいような雰囲気づくりに努めなければなりません。そうしなければ、部下は自らの考えを口に出してくれなくなり、組織も活力を失います。

 部下からの意見に耳を傾ける上で第一に大切なのは、「組織の目標達成に有益か?」という視点でその内容を吟味するスタンスです。例えば、複数の人間から異なる意見が出された場合、それらの意見に耳を傾けるか否かは、当の発言者の日ごろの言動に左右されがちです。しかし、上司は、「誰の意見か?」ではなく「何が正しいか?」をベースに判断することが大切です。

 これまでも繰り返し述べてきましたが、病院という組織の目標は、「より良い医療を患者様に提供し、健全な経営を行い、従業員を幸せにすること」です。そして、組織が一体感を持って目標の達成に向かうには、自由闊達に意見を交し合える風土が大切です(もちろん組織としての秩序は必要です)。

 とはいえ、そうした雰囲気の組織を作り上げるのは、そう簡単ではありません。冒頭でも言ったように、部下は、上司にはなかなか意見しにくいものです。さらに、上司の地位が上であればあるほど、下の人間は面と向かって意見を言わなくなります。人事上の不利益を恐れるのもその一因ですが、それ以前に、上司に意見することに慣れていないのです。その反対に、上司は、部下から意見を言われることに慣れていません。

 組織の中で、上司の意見に対して部下から意見が出ないとき、上司は、「皆が自分の意見に賛成してくれている。やはり私は正しい」と考えがちですが、それが“錯覚”であることも多々あります。部下は、異論がないのではなく、口に出さないだけなのかもしれません。その可能性を考えず、自分の意見に過剰な自信を持つと、大きな間違いを犯してしまうことになります。

 そうした閉鎖的な組織においては、「内部告発」によるトラブルが発生する危険性がつきまといます。「内部告発」は、上司に意見を言える雰囲気がなく、相談する相手も意見を発言する場所もないような独裁的な組織で、組織内に問題を解決するシステムがない場合に良心の呵責に耐えかねた部下が起こしてしまうものです。

著者プロフィール

緑山草太(ペーンネーム)●みどりやま そうた氏。消化器外科医。1988年、東京の医科大学を卒業。2000年、栃木県の国立病院の外科部長。2004年に再び東京の大学病院に戻り、医局長を務める。

連載の紹介

緑山草太の「僕ら、中間管理職」
良い診療も良い経営も、成否のかぎを握るのは中間管理職。辛くとも楽しいこの職務は、組織の要。「良い結果は健全な組織から生まれる」と話す緑山氏が、健全な組織を作るための上司の心得を紹介します。

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