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Arch Intern Med誌から
高齢糖尿病患者への抗精神病薬投与で高血糖が増加
初回処方後の高血糖入院リスクは9~15倍

 抗精神病薬の使用は過去10年間に大きく増加しているが、高齢者への投与には注意が必要だ。カナダ臨床評価学研究所(Institute for Clinical Evaluative Sciences)のLorraine L. Lipscombe氏らは、高齢の糖尿病患者に抗精神病薬を投与すると、高血糖による入院リスクが上昇すること、初回処方後のリスク上昇が特に顕著であることを明らかにした。詳細は、Archives of Internal Medicine誌2009年7月27日号に報告された。

 抗精神病薬の使用は体重の増加を招く。これにより糖尿病やメタボリックシンドロームを発症する可能性があることは知られていた。しかし、既に糖尿病に罹患している人々が抗精神病薬を使用した場合の高血糖リスクについてはほとんど情報がなかった。

 そこで著者らは、非定型抗精神病薬と定型抗精神病薬を高齢の糖尿病患者に投与した場合に、高血糖リスクに影響が現れるかどうかを調べるネステッドケースコントロール研究をカナダで行った。

 オンタリオ州の薬剤給付データベースとカナダの治療記録、退院記録のデータベースなどを利用して、66歳以上の糖尿病患者で、2002年4月1日から06年3月31日の間に抗精神病薬の使用を開始した人々に関する情報を収集した。最初の抗精神病薬処方日をコホートへの組み入れ日とした。

 このコホートを、組み入れ日から180日前の時点の糖尿病に対する治療に基づいて、さらに3群(インスリン治療を受けていた患者、経口血糖降下薬を使用していた患者、治療を受けていなかった患者)に分けた。

 患者死亡、高血糖による初回入院、または試験期間終了(2007年3月31日)まで追跡。高血糖による入院は、退院時の診断が高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧性昏睡だったケースと定義し、救急部門受診例も含めた。

 ケース1人につき、コントロールを最高で10人選出。コントロールは、コホート内のまだ入院がない患者の中から、年齢、性別、組み入れ年、追跡期間がマッチする人々を選んだ。入院日を発症日とした。

 処方記録に基づいて、非定型抗精神病薬(オランザピン、クエチアピン、リスペリドン)または定型抗精神病薬を、現在使用(直近の処方の処方期間中に入院)、最近使用(入院の15~180日前に使用あり)、過去に使用(使用を中止してから180日超を経過している患者:参照群)のいずれに該当するかを決定し、これらグループ間で高血糖による入院リスクを比較した。年齢、性別、居住地域の貧困度、糖尿病罹患期間、Charlson併存疾患指数、併存疾患の状態、医療サービス利用歴で調整し、ロジスティック回帰分析を行った。

 対象となった1万3817人の患者(平均年齢78歳)を平均2年間追跡した。組み入れ時に、5549人(40.2%)は糖尿病治療を受けておらず、6284人(45.5%)が経口血糖降下薬を使用しており、1984人(14.4%)はインスリン投与を受けていた。

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