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BMJ誌から
マンモグラフィーによる乳癌の過剰診断率は52%
スクリーニング導入による罹患率の上昇から推定

 検診で発見されなければ、生涯にわたって臨床的に診断されることがない癌、言い換えれば、患者に症状をもたらすことがなく治療は不要の癌が、マンモグラフィーによる乳癌スクリーニングで発見される頻度はどの程度なのだろうか。

 デンマークのノルディックコクランセンターのKarsten Juhl Jorgensen氏らは、スクリーニングで乳癌と診断された患者の3人に1人が過剰診断だったとする推定結果をまとめ、BMJ誌2009年7月25日号に報告した。

 非浸潤性の癌のみならず、浸潤性の癌でも、生涯にわたって害をなさない場合があることは知られている。しかし、治療が必要な癌とそうでない癌を明確に区別できない現状においては、過剰診断は過剰治療に結びつき、患者にリスクや害をもたらす可能性が高い。

 マンモグラフィーによるスクリーニングについて評価した無作為化試験の結果を分析したコクランレビューでは、過剰診断率は30%と報告している。

 著者らは、公的に行われている乳癌スクリーニングの過剰診断率を調べた研究がこれまで行われていなかったことから、公的なスクリーニングの導入前後の乳癌罹患率の変化に基づいて過剰診断率の推定を試みた。

 PubMedに登録されている文献と、それらが引用している参照文献などの中から、スクリーニング導入前の最低7年間と、スクリーニングが完全に定着した後の最低7年間の、スクリーニング対象年齢の女性と、対象年齢を超えていてスクリーニングを受けていない高齢女性の乳癌罹患率を報告している研究を選出。

 条件を満たした5件のデータから、乳癌罹患率(非浸潤性乳癌を含む)、集団の大きさ、スクリーニングの実施状況などの情報を抽出し、線形回帰モデルを用いてスクリーニング導入前後の乳癌罹患率の変化の傾向を調べた。さらにメタ分析を行って、過剰診断のレベルを推定した。その際、スクリーニングとは無関係の罹患率の経時的変化と、対象年齢を超える年齢群の女性の罹患率の変化で調整を行った。対象年齢を超えた女性においては、過去のスクリーニング受検に起因する罹患率低下が見られる可能性を想定した。

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