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「決まりごと」の多さで分かる上司の資質

2009/08/20

 組織における「決まりごと」はシンプルな方がいいと思っています。細かい決まりごとをたくさん作っても、実行できなければ意味がありません。また、「決まり」とは、「目標」を達成させるための手段です。従って、決まりがきちんと守られていても、目標が全然達成できていないのでは、本末転倒です。

 「決まりごと」と「目標」は、「過程」と「結果」の関係によく似ています。過程も大切ですが、結果にこだわらずに過程を偏重するのは好ましくありません。過程はあくまで過程です。また、決まりごとはあくまで、目標を達成するための手段です。手段が目的化してはいけません。

「決まりごと」を作るのが好きな日本人
 とかく上司は、決まりごとを作れば、部下はそれをすべて守ってくれると信じがちです。しかし、実際はそんなにうまくはいきません。細かいルールをたくさん設けてもすべては覚え切れませんし、決まりを守るのに汲々としてしまい、目標の達成という大儀を忘れてしまいかねません。

 時には部下に目標だけを提示して、それぞれの問題の対処は、基本的に個々の判断に任せるというやり方の方が往々にしてうまくいくものです。もちろん、最低限の決まりごとや、部下が目標を達成させる上でのアドバイスは必要ですが…。本人の自主性の尊重を前提としたこのような考え方は、ひょっとしたら欧米型の考え方かもしれません。

 日本人は、決まりを作るのがとても好きです。また、決まりに従い、与えられた仕事をこなす能力は、日本人が得意とするところとされます。半面、自分の判断で物事に対処し、新しいものを創造する能力は、まだまだ欧米にはかなわないかもしれません。

 右肩上がりの経済成長期においては、日本人のこの特質が、とても優位に働きました。追い風の中、決まりごとさえ守っていれば、皆がそれなりの成績を収めることができたのです。ところが、経済状況が厳しくなった結果、個々人の能力や成果がより重視されるようになり、決まりごとだけ守っていれば年功序列で上に行けるという時代は終わりました。結果を出すにはどうすればよいかを自分の頭で考え、実行する姿勢が強く求められるようになってきたのです。

著者プロフィール

緑山草太(ペーンネーム)●みどりやま そうた氏。消化器外科医。1988年、東京の医科大学を卒業。2000年、栃木県の国立病院の外科部長。2004年に再び東京の大学病院に戻り、医局長を務める。

連載の紹介

緑山草太の「僕ら、中間管理職」
良い診療も良い経営も、成否のかぎを握るのは中間管理職。辛くとも楽しいこの職務は、組織の要。「良い結果は健全な組織から生まれる」と話す緑山氏が、健全な組織を作るための上司の心得を紹介します。

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