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NEJM誌から
骨粗鬆症性椎体骨折への椎体形成術に疼痛軽減効果なし
2つの無作為化試験で同様の結果

 骨粗鬆症性椎体骨折患者の一部に痛みの持続が見られる。オーストラリアの研究グループと米国を中心とする研究者たちが、それぞれ別個に無作為化試験を行い、椎体骨折による痛みの軽減に対する椎体形成術の有効性を調べた結果、いずれも試験でも対照群との間に有意な差を示せず、椎体形成術の広範な適用に疑問を投げかけた。2本の論文はNEJM誌2009年8月6日号に掲載された。

 米国では毎年、75万人が新たに椎体骨折と診断される。また50歳を超えた人々の4人に1人がその後の人生で1回以上椎体骨折を経験するという。

 椎体骨折は多くの場合、数カ月で骨癒合に至り、症状は消失する。しかし、一部の患者は保存的治療に反応せず、入院または長期療養が必要になる。これらの患者に有効な介入として、椎体形成術に期待が集まるようになった。

 既に、アクリル骨セメント(PMMA)を経皮的に注入する椎体形成術は、疼痛のある骨粗鬆症性椎体骨折の治療に広く用いられており、ガイドラインも、通常の治療に反応しない患者への適用を推奨している。米国では2001年から2005年の間に椎体形成術の適用件数は倍増した。

 しかし、その有効性に関するエビデンスは十分ではない。観察研究では速やかに除痛が得られ、効果は持続すると報告されているが、広範な適用を支持する質の高い無作為化試験のデータはこれまでなかった。

 オーストラリアMonash大学のRachelle Buchbinder氏らは、症状発現から12カ月未満で骨癒合に至っていない骨粗鬆症性椎体骨折患者を対象に、シャム治療群を対照とする二重盲検の多施設無作為化試験を行って、椎体形成術の利益とリスクを評価した。

 2004年4月から2008年10月までに、一般開業医または専門医を受診した、もしくは、病院や救急部門に入院している患者の中から、疼痛のある椎体骨折が1~2カ所ある患者を選出。圧迫骨折の程度がGenantらの評価法(グレード0から3に分類、数字が大きいほど重症)でグレード1以上、MRIで浮腫と骨折線のいずれかまたは両方が認められた患者78人を登録し、無作為に椎体形成術(38人:介入群)またはシャム手術(40人:対照群)に割り付けた。過去に椎体形成術を受けていた患者などは除外した。

 治療は同国内4施設で行われた。シャム手術群には穿刺針刺入を行い、先が鈍いスタイレットを挿入して、実際の治療の操作を模倣した。

 アウトカムの評価は1週間後、1カ月後、3カ月後、6カ月後に質問票を用いて行った。追跡は2010年10月まで継続する予定だ。

 主要アウトカム評価指標は、3カ月の時点の全般的な疼痛レベル(調査時点までの1週間の疼痛の程度を0~10ポイントで表す。10は想像可能な最大の痛みを意味する)に設定。2次アウトカム評価指標は、QOL、安静時と夜間の疼痛レベル、自己申告による疼痛、疲労、健康状態全般などとした。

 6カ月の追跡を終えたのは71人(介入群35人、対照群36人)。

 1週間、1カ月、3カ月、6カ月後のどの時点でも、両群の全般的な疼痛はベースラインに比べ有意に減少していた。椎体形成術は、評価が行われたすべての時点、すべての指標において、シャム治療に有意に優る利益を示せなかった。

 3カ月後の疼痛スケールは、両群ともにベースラインに比べ臨床的に意義のあるレベル(スコアが1.5以上改善)の減少を示した。介入群では2.6±2.9(SD)ポイント減少、対照群は1.9±3.3ポイント減少しており、群間差は0.6(95%信頼区間-0.7から1.8)だった。

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