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ワクチン・ギャップ解消の視点でマニフェストをみる
高畑紀一(細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会事務局長)

2009/08/27

 我が国で行なわれる定期予防接種は、予防接種法によって対象となる疾病等が規定されているため、新たな疾病やワクチンを定期接種の対象とするためには予防接種法の改正が必要となる。

 予防接種法の改正は国会で審議されるものであるから、細菌性髄膜炎から子どもたちを守るワクチンの定期接種化を求めて活動している私にとって、いくつかの政党が衆議院選挙に向けた発表したマニフェスト・公約の中に、「ヒブワクチンの定期接種化」を盛り込んだことを、大いに歓迎したいと思う。

 ヒブワクチンの定期接種化をマニフェストや公約に位置づけたのは、民主党と日本共産党の二党で、これら以外の政党は、ヒブワクチンについても細菌性髄膜炎についても、何ら言及していない。

 ヒブに次ぐ起因菌となる肺炎球菌については、日本共産党だけが「小児用肺炎球菌ワクチンの接種に対する公費助成をすすめる」としている。日本共産党は細菌性髄膜炎を予防するワクチンだけではなく、麻疹についても言及するなど、予防接種に限って評価すれば、最も充実した内容といえる。

 ヒブワクチンの定期接種化を公約として掲げた民主党が政権の座についた場合、ヒブワクチンの定期接種化は間違いなく実現されるものと期待したいし、公約として掲げた以上は実現されなければならない。

 国立病院機構三重病院の神谷齊名誉院長等は、ヒブワクチンの定期接種化のための費用は約332億円と試算している。一般財源の規模からみても、財源を理由に実施を諦めるような金額ではない。マニフェスト選挙を単なるリップサービス合戦にしないためにも、選挙後、速やかに定期接種化に向けた取組がなされることが期待される。

 民主党、日本共産党が細菌性髄膜炎から子どもたちを守るワクチンについてマニフェスト・公約に盛り込んだのに対し、与党の自由民主党、公明党の両党は全く触れていない。

 6月3日、公明党の太田昭宏代表等は、舛添要一厚生労働大臣に会い、細菌性髄膜炎から子どもたちを守るワクチンの早期定期接種化=ヒブワクチンの定期接種化と、小児用7価肺炎球菌ワクチンの早期承認を要請している。その公明党が何ら言及していないことを奇異に感じた。

 私は、自由民主党、公明党の両党に「党として『細菌性髄膜炎から子どもたちを守るワクチンの定期接種化』を公約として掲げていただけるのか、それとも重点政策として位置づけられないのか、伺いたい」と質問書を送付した。

 これに対し公明党からは、「党として従前より重点政策としており、そのことに変わりはない。マニフェストに記載は無いが、党の公約として位置づけている」との回答があった。重点政策であり公約として位置づけているのなら、マニフェストに書き込めばよかったのにと思わなくも無いが、公明党の公式な見解として回答いただけたので、公明党も細菌性髄膜炎から子どもたちを守るワクチンの定期接種化を公約としていると理解する。

 本来ならマニフェストを訂正し、きちんと明文化すべきなのであろうが、民主党がマニフェストを修正したことについて与党は激しく批判したこともあり、自らマニフェストを修正することは無理なのであろう。

 しかしながらマニフェストが有権者に対し、自らの投票行動の判断材料として政策を訴えるツールである以上、重点政策が盛り込まれないなどということはあるべきではない。なぜマニフェストに反映されなかったのか、公明党は内部検証すべきだろう。なお、自由民主党からは、何ら回答は寄せられていない。

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