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【日経メディカル11月号特集連動企画(1)】
H5N1型インフルエンザの危機、すぐそこまで

 「残念ながら、良いニュースは1つもない」と、日本の新型インフルエンザ対策で中心的な役割をなす人物の一人、国立感染症研究所ウイルス3部部長の田代眞人氏の表情は厳しい。「導火線は確実に短くなってきている」。新型インフルエンザ対策の関係者に衝撃を与えた2006年最大の「事件」は、4~5月にインドネシアのスマトラ島カロ地方で起こったH5N1型インフルエンザの集団感染だった。

ヒト→ヒト→ヒト感染の恐怖
 世界保健機関(WHO)の発表によると、最初に感染したと疑われるのは、裏庭で少数のニワトリを飼っていた37歳の女性Aだ。発症したのは4月23日で、それ以前に死んだニワトリから、H5N1型インフルエンザウイルスに感染したと見られている。Aは5月2日に入院し、2日後に死亡したが、入院までの間に周囲にヒト-ヒト感染が広がっていた(図1)。

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