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医療崩壊のウソとホント―国民が知らされていない現場の真実

2009/09/16

 私が医療崩壊の問題を世に問うために、『誰が日本の医療を殺すのか―「医療崩壊」の知られざる真実』を上梓したのは、ちょうど2年前、2007年9月のことでした。それまでは、自分が書籍を出版するなど想像だにしていませんでした。私が本を書こうと思ったきっかけは、『病院が消える―苦悩する医者の告白』という一冊の本との出会いでした。

 『病院が消える―苦悩する医者の告白』は、長崎大学名誉教授だった高岡善人先生が、日本の病院の危機を訴えた名著です。私が同書を手にしたのは、初版(1993年10月)から10年以上が経過したころでした。当時の私は、なぜ日本の医療がグローバルスタンダードから立ち遅れてしまったのか、なぜ医療崩壊が止まらないのか、その根本原因や歴史的背景が分からずに悩んでいました。そんな私にとって、『病院が消える』はまさに目から鱗の記載に満ち溢れていたのです。

 その後、縁あって高岡善人先生から直接薫陶を受ける機会を得て、日本の医療問題の歴史的背景を知り、医療崩壊をテーマに全国で講演することができるようになりました。『病院が消える』という一冊は、時代を超えて、40歳以上年の離れた高岡先生と私の出会いのきっかけとなったのです。新聞やテレビも良いですが、やはり書籍という媒体は、末永く情報を社会に伝えるメディアなのだと痛感しました。

 さて 政権交代はなされたものの、まだ医療崩壊阻止につながる具体的な施策は見えてきていません。日本は医療崩壊だけでなく、格差社会、自殺大国等々、多くの問題を抱えています。医療現場からすれば、すぐにでも新政権に実効性のある政策を打ち出してもらいたいところですが、まだその行方は見えず、状況は混沌としています。地域の病院が消えてしまってからでは遅いのです。現場から継続的に情報を発信することが求められていると思います。

著者プロフィール

本田宏(済生会栗橋病院院長補佐)●ほんだ ひろし氏。1979年弘前大卒後、同大学第1外科。東京女子医大腎臓病総合医療センター外科を経て、89年済生会栗橋病院(埼玉県)外科部長、01年同院副院長。11年7月より現職。

連載の紹介

本田宏の「勤務医よ、闘え!」
深刻化する医師不足、疲弊する勤務医、増大する医療ニーズ—。医療の現場をよく知らない人々が医療政策を決めていいのか?医療再建のため、最前線の勤務医自らが考え、声を上げていく上での情報共有の場を作ります。

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