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産業保健における新型インフルエンザ対応への提言
長尾和宏(長尾クリニック院長)

2009/09/16

1、濃厚接触者の出社停止問題

 新型インフルエンザ患者が出た場合、家族は濃厚接触者となり得ます。それを会社に言った場合、症状が全く無いにも関わらず「出社停止」の命令を受けたという相談を時々受けます。また、「新型インフルエンザではないという証明書」を持参しないと出社が許可されない、という相談もよくあります。現在、「濃厚接触者であっても無症状であれば出社しても良い」という通達が出ているにも関わらず混乱が続いています。このような無用な外来説明や診断書発行が不要となるよう、政府は、煽るような死亡者公表より、濃厚接触者が払うべき注意点についての国民啓発を優先して行う必要があります。

2、予防投与やタミフル備蓄に対する法的規制緩和を

 濃厚接触者がハイリスク者であった場合、希望すればタミフル予防投薬を受けることが出来ます。しかし健康保険が適応されないため経済的理由であきらめる方が多いようです。それは可哀そうだと、本当は規則違反ですが、健康保険で投与されることもあると聞きます。予防投与のエビデンスは十分でないにしろ、ハイリスク者に予防投与を行い易くするよう何らかの経済援助をすることはできないでしょうか。また企業防衛のため、社員用にタミフルの備蓄をしたいと希望した場合、現行法下では企業のタミフル購入はできません。

 ここは特例を設けて、例えば産業医の管理責任のもとタミフル備蓄が可能という規制緩和はできないものでしょうか。診療所を有する大企業では備蓄可能ですが、中小・零細企業にも配慮したタミフル備蓄政策を検討すべきです。また中小・零細企業でも海外に駐在員のいるところも多く、外務省、厚労省が何らかの法的緩和を行うべきでしょう。

3、産業医と企業の連携強化を

 集団発生を防ぐため、いまこそ産業医と企業の連携強化が求められると感じます。同時に産業医業務や責任の増大に対しては国の予算配慮も検討すべきです。企業内でもイントラネットを活用したインフルエンザ関連情報の共有は必須でしょう。一方、発熱しても人出不足から無理をして出社する人もいます。「発熱者が休むことは仕方ない」、「新型インフルエンザは恥ずかしいことではない」、という啓発を産業医を中心として進めるべきです。

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