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「新型インフルエンザ」ワクチン接種の優先順位、決められますか?
木村知(有限会社T&Jメディカル・ソリューションズ代表取締役、医学博士)

2009/09/17

 私の頭が悪いのか、それとも優柔不断な性格のためなのか、はたまたその両方のためなのか、いくら考えてもわからないし決められません。それは「新型インフルエンザワクチン」接種の優先順位のことです。

 厚労省は9月4日付けで「新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチンの接種について(素案)」を公表しました。そこには、優先接種対象者として医療従事者(救急隊員を含む)の次に、妊婦および基礎疾患を有する者が挙げられています。ワクチンの供給量が不十分で、接種されるべき人たちに十分供給できないのであれば、この優先順位は決めておかざるを得ません。

 そして国内外の重症者の報告から、この順位付けは妥当なものであると考えますが、一概に「基礎疾患を有する者」と言っても、実際の臨床現場でこれらの人たちを、「接種対象者」と「非対象者」に「選別」することなどできるのでしょうか?

 素案では、この基礎疾患として、呼吸器疾患(喘息を含む)、心疾患(高血圧を除く)、腎疾患、肝疾患、神経疾患、神経筋疾患、血液疾患、代謝性疾患(糖尿病を含む)、免疫抑制状態(HIV、悪性腫瘍を含む)などと挙げられていますが、あまりに漠然としすぎています。揚げ足取りだ、屁理屈だと言われてしまうかもしれませんが、基礎疾患としてこれらの病名、病態を列挙してしまうと、けっこうな人数の人たちが該当してしまうのではないでしょうか。

 糖尿病ひとつとってみても、インスリン導入されている人もあれば、食事療法でコントロールしている人もいます。治療効果が十分現れている人もいれば、頑張っているのになかなかデータが改善しない人もいます。そうかと思えば、ほとんど通院もせず、会社の健診でひっかけられて仕方なく来院するHbA1cが2ケタの、年に1度の「常連さん」もいます。でも、これらの人はみなさん「糖尿病」です。コントロール良好の人は対象外で、不良の人が対象だ、と考えれば、ある程度HbA1cの数値などで、区切ってしまえばいいでしょう。

 しかし、実際の臨床現場では、そのように簡単にできないのではないか、というのが私の危惧しているところです。「新型インフルエンザ」について、世間ではもはやパニックに近い不安と恐怖が「蔓延」しています。そういった中で、「インフルエンザワクチン」に対する世間の期待と希望が日ごとに高まってきています。

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