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ドラッグラグの本当の理由―日本の薬の値段は高いのか?―
上昌広(東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門准教授)

2009/09/18

※今回の記事は村上龍氏が編集長を務めるJMM (Japan Mail Media)8月26日発行の記事(「第38回 ドラッグラグの本当の理由:日本の薬の値段は高いのか?」)をMRIC用に改訂し、転載させていただきました。

 先月の配信では、グリベックという抗がん剤に関する患者の費用負担の問題を取り扱いました(2009.8.26「お金がなくてがん治療が受けられない」()())。その際にも書きましたが、この問題の本質は、財政上の理由から患者の自己負担割合をどんどん引き上げる一方で、その自己負担に限度額を設ける高額療養費還付制度には抜本的な手を入れてこなかった政治や行政の不作為にあると思われます。

 しかしながら、グリベックをはじめとする高額な薬が増えてきたことが、この高額療養費還付制度の問題点を顕在化させていることもまた事実です。果たして、日本の薬の値段はどのようにきめられているのでしょうか? そして、その値段は高すぎるのでしょうか?

【薬の開発はより専門的でニッチな領域へ】

 高血圧や糖尿病をはじめとする多くのメジャーな疾病領域の薬は、「ほぼ開発し尽くされて、多くは既にある薬のマイナーチェンジ」という状況になってしまったと言っても過言ではありません。このため、薬の開発はどんどん、がんや難病などのより専門的でニッチな疾病領域へとシフトしています。

 先月の配信でも書きましたとおり、こうした領域は患者数も少なくあまり儲からないため、大手製薬企業は従来あまり関心を示してこなかったのですが、近年では大手もこうした領域に積極的に手を延ばさざるを得なくなってきました。その結果、グリベックをはじめとする効き目の鋭い革新的な薬が次々に生み出されています。

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