ワルファリンは心房細動患者の脳卒中リスクを低減するが、出血リスクを上昇させる危険性があり、慎重に使用する必要がある。カナダMcMaster大学のStuart J. Connolly氏らは、直接トロンビン阻害作用を持つ経口抗凝固薬dabigatran etexilate(ダビガトラン・エテキシラート)がワルファリンの代替として有用であることを明らかにした。この大規模フェーズ3試験の結果は、NEJM誌電子版に2009年8月30日に報告された。
ワルファリン使用の際は、出血イベントを回避するために頻繁な血液検査と用量調節が行われる。さらに患者は、食物や他の医薬品との相互作用にも注意しなければならない。このため、途中で使用を中止するケースが少なからず存在する。また、多くの患者で、効果を期待できる範囲に凝固活性が調節されていないという報告もある。
ダビガトランは、強力で安定した抗凝固薬で、他の医薬品や食品との相互作用の心配は少なく、用量調節の必要もない薬剤として開発されてきた。
今回の無作為化フェーズ3試験RE-LY(Randomized Evaluation of Long-Term Anticoagulant Therapy, Warfarin, Compared with Dabigatran)は、日本を含む44カ国の951医療機関で、脳卒中リスクを有する心房細動患者を対象に行われた。
2005年12月から2007年12月に、スクリーニング時または過去6カ月間に心電図で心房細動が認められた患者のうち、以下のいずれかの条件を満たす人々を登録した:脳卒中または一過性脳虚血発作の既往あり、左室駆出分画が40%未満、NYHAクラスII以上の心不全を過去6カ月以内に経験、75歳以上、または65~74歳で糖尿病、高血圧、もしくは冠動脈疾患を有する患者。
条件を満たした1万8113人(平均年齢71歳、63.6%が男性)を、ダビガトラン150mgまたは110mgを1日2回、あるいはワルファリン(プロトロンビン時間の国際標準比〔INR〕を2.0~3.0に維持。INR測定は月1回以上実施)のいずれかに割り付けた。ダビガトランについては二重盲検方式で、ワルファリンはオープンラベルで投与した。低用量アスピリンまたはそれ以外の抗血小板薬の使用は許可した。
主要評価指標は脳卒中または全身性塞栓症に設定し、主要安全性評価指標は、大出血(ヘモグロビン値が20g/L以上低下、2ユニット以上の輸血が必要、非常に重要な臓器また部位に発生した症候性の出血)に設定した。分析はintention-to-treatで行い、Cox回帰分析により相対リスクを推定した。
非劣性のマージンは、相対リスクの片側検定の97.5%信頼区間の上限が1.46以下とした。
海外論文ピックアップ NEJM誌より
NEJM誌からダビガトランがワルファリンの代替として有用脳卒中と全身性塞栓症リスクは同等、大出血リスクはワルファリン群より低い
2009/09/28
大西 淳子=医学ジャーナリスト新規に会員登録する
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