日経メディカルのロゴ画像

NEJM誌から
米国ではやはり60歳以上の一部が新型インフルの抗体を保有
1976年の豚インフルエンザワクチン接種者では高い抗体価

 60歳を超える米国民の一部が新型インフルエンザ(2009 H1N1)に対する抗体を保有するという予備的な結果(関連記事はこちら)を5月に報告していた米疾病管理センター(CDC)の研究者たちが、詳細な分析結果をNEJM誌電子版に2009年9月10日に報告した。

 今回の報告では、1976年に米国で豚インフルエンザ感染者が発生した際にワクチン接種を受けた人々の血清には、2009 H1N1に対する交差反応抗体が見られたという新たな結果も追加された。

 CDC国立免疫呼吸器センターのKathy Hancock氏らは、異なる年齢層の人々を対象に、過去のインフルエンザ感染やワクチン接種が2009 H1N1に対する交差反応抗体を誘導しているかどうかを評価した。

 1976年の豚インフルエンザワクチン臨床試験で採取された血清や、学究機関、政府機関、企業が採取、保存していた血清などを対象に、マイクロ中和(MN)試験と赤血球凝集抑制(HI)試験を行い、2009 H1N1のA/California/014/2009、季節性H1N1、そして1976年の豚インフルエンザA/New Jersey/8/1976(A/NJ/76)株に対する交差反応抗体を測定した。

 MN試験の結果とHI試験の結果の相関性は高く、MN試験の方がより高い抗体価を示し、血清転換も高い割合で認められたため、こちらを用いて集団間の比較を行った。

 HI試験では、抗体価40倍以上であればインフルエンザウイルスの感染またはインフルエンザ発症のリスクが50%以上低下するとみなされている。これに基づき、線形回帰モデルを用いてHIが40倍以上に相当するMN試験の抗体価を求めたところ、小児では40倍以上、成人では80~160倍となった。そこで、このレベルの抗体価を示す人々の割合を比較した。

 まず、生後6カ月から9歳までの小児(中米在住の小児も含む)から得た124検体を調べたが、2009 H1N1に対する交差反応抗体はほとんど認められなかった。

 このうち季節性インフルエンザの3価不活化ワクチンの接種を受けた、生後6カ月から9歳までの小児55人では、接種後に2009 H1N1に反応する交差抗体価が4倍以上上昇(血清転換)していた人は1人もいなかった。

 季節性インフルエンザの弱毒化生ワクチンの接種を受けた6カ月から9歳までの小児24人についても、2009 H1N1に対する血清転換は認められなかった。

 oil-in-waterアジュバントを含む季節性不活化ワクチンを接種していた、生後6カ月から59カ月までの小児45人では、2009 H1N1に対する血清転換が2%にのみ認められた。

 一方、季節性ワクチンの接種を受けた成人344人(欧州在住者も含む)においては、一部に2009 H1N1に対する血清転換が見られた。2007-2008年ワクチンを接種した18~64歳では148人中33人(22%)、2008-2009年ワクチンの18~40歳では83人中10人(12%)、2007-2008年ワクチンの60歳以上では63人中3人(5%)、2008-2009年ワクチンの60歳以上では50人中0人(0%)だった。

 ワクチン接種前に、2009 H1N1に対する160倍以上の抗体価を示したのは、上記の18~64歳の集団では7%、18~40歳の集団では6%。60歳以上の63人の集団では33%、50人の集団では8%だった。

 なお、2007-2008年の季節性ワクチンは、2009 H1N1に対する抗体価160倍以上の人の割合を上昇させていた。すなわち中程度のブースター効果が見られたが、2008-2009年のワクチンにはそうした影響は見られなかった。

この記事を読んでいる人におすすめ