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JAMA誌から
抗菌薬投与の判断指標にプロカルシトニンが有用
有害転帰を増やさず処方期間を短縮

 不要な抗菌薬投与を減らすための戦略として、血清プロカルシトニンPCT)値を指標とするアルゴリズムに基づいて抗菌薬投与の是非を判定する方法が、近年提唱されている。この方法の有用性を評価したスイスAarau州立病院のPhilipp Schuetz氏らは、標準的なガイドラインに基づく判断と比べて、有害な転帰を増やすことなく抗菌薬曝露と抗菌薬関連有害事象を減らせることを明らかにした。詳細は、JAMA誌2009年9月9日号に報告された。

 欧米で抗菌薬が最も高頻度に用いられる疾患は、下気道感染だ。急性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪、細菌性市中肺炎など、広範な疾患がこれに含まれる。こうした疾患は、日常的に行われる検査や症状だけではウイルス感染との区別が難しいため、下気道感染患者の75%に抗菌薬が投与されているのが現状だ。

 血清PCTの測定は、細菌感染の有無を調べるアプローチの1つとして知られている。血清PCTの測定値を基に抗菌薬を使用するかどうかを判断するアルゴリズムについては、複数の研究が抗菌薬投与の削減に有用であることを示唆する結果を報告しているが、十分に質の高い研究は行われてこなかった。

 そこで著者らは、PCTアルゴリズムが、重篤な有害転帰のリスクを高めることなく抗菌薬使用を減らせるかどうかを調べるため、大規模な無作為化非劣性試験ProHOSPを実施した。

 この試験は、スイスの6つの第3次医療施設の救急部門で行われた。2006年10月から2008年3月まで、18歳以上で発症から28日以内の重症下気道感染の患者1359人を登録。組み込み条件は、呼吸器症状(咳、痰、呼吸困難、頻呼吸、胸膜痛のいずれか1つ以上)を呈し、聴診によりラ音または捻髪音がある、または感染を示す症状(中核体温が38.0度超、悪寒、白血球数が1万/μL超または4000/μL未満のいずれか1つ以上)がある、とした。

 このうち、671人を、血清PCT値を指標に抗菌薬の投与開始と投与中止を決定するPCT群に、688人を、標準的なガイドラインに基づいて治療を行う対照群に割り付けた。PCT群の患者のPCT値は、それぞれの病院で測定した。

 著者らが用いたPCTアルゴリズムの概要は以下の通り。

・PCTが0.1μg/L未満なら、抗菌薬の使用は強く否定される。
・PCTが0.1~0.25μg/Lなら、抗菌薬の使用は否定される。
・PCTが0.25~0.5μg/Lなら、抗菌薬の使用が推奨される。
・PCTが0.5μg/L超なら、抗菌薬の使用が強く推奨される。

・0.25μg/L未満でも、特定の条件を満たす患者には抗菌薬の使用を考慮できる。

・0.25μg/L未満の患者に対して抗菌薬を使用しない場合には、6~24時間以内に再度PCTを測定する。

・入院患者への投与を開始した場合には、3、5、7日目にPCTを測定。投与開始の判断に用いたのと同じカットオフ値を指標に、使用を中止するかどうか判断する。ただし、当初のPCT値が10μg/L超と非常に高かった患者については、当初の値の20%まで低下した段階で投与中止が推奨され、10%に低下した段階で投与中止が強く推奨される。

・PCT値が低下しない場合には、治療失敗を疑う。

・外来患者に対する抗菌薬の投与期間は、受診時のPCT値が0.25~0.5μg/Lなら3日間、0.5~1.0μg/Lなら5日間、1.0μg/L超なら7日間を原則とする。

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