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混合診療判決と長妻コメントの“冷たさ”

2009/10/06

 先日、日経メディカル オンラインでも報じられたように(2009.9.29「『混合診療』の禁止は適法」)、2007年11月に東京地裁が下した「混合診療を禁止する国の政策は違法」とする判決は、東京高裁の控訴審では「混合診療は原則として禁止したと解するのが相当」として取り消されました(2007.11.8「混合診療を認めないのは違法―東京地裁判決を読む」)。

 原告の「混合診療を受けた場合に医療費が全額自己負担となるのは不当」だという主張も、健康保険法は一定の条件の下で、例外的に保険外と保険診療の併用を認める「保険外併用療養費制度」を設けており、「支給要件を満たす限りにおいて保険給付が認められる」として、「制度に該当するもの以外の混合診療は、保険給付を受けられないと解すべき」と退けられました。

 健康保険法には、混合診療の可否についての条文がありませんから、一審判決のように明文化されていないことを制限するのは違法であると解釈することもできれば、例外的に混合診療を認めている制度があるのだから、この例外に該当しない場合は保険給付は認められないという控訴審判決のような解釈もできます。

 健康保険法や療養担当規則は、保険医は保険で認められている標準的医療を行うべきとしていますから、保険診療とそれ以外の自費診療を併用すべきではないというのはもっともでしょう。

 ただ、この訴訟の原告のように、癌という命にかかわる病気で、まだ保険で認められていない治療を受けたからといって、もともと保険の利く部分まですべて自費で払えというのは、実に酷薄な措置であるという見方もあり、憲法第13条の定める幸福追求権に反するようにも思われます。

 今回の原告の清郷さんと思われる方が以前、私がこのブログで混合診療について取り上げた際に、以下のようなコメントをくださいました(2009.1.30「混合診療回避に新たなアイデア―北大病院がピロリ菌外来」)。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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