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Lancet誌から
頭部外傷の小児の中でCT不要者を見分けるには
陰性予測値と感度の優れた予測基準を提案

 頭部外傷により救急部門を受診する小児は少なくない。そうした患者に対するCTの適用は増えている。そこで、米California大学Davis校のNathan Kuppermann氏らは、不要なCT検査を回避するために、早急に治療(特に脳外科手術)が必要な、臨床的に重要な外傷性脳損傷(clinically-important traumatic brain injuries:ciTBI)ではない患者を見分けるツールの開発を試みた。確認を終えた予測基準は、非常に高い陰性予測値と感度を示した。詳細は、Lancet誌2009年10月3日号に報告された。

 小児の外傷性脳損傷は死亡と障害の原因になる。北米では、外傷性脳損傷で救急部門を受診した小児の約半数にCT検査が行われている。

 しかし、脳損傷の一部はCTでは検出できないほか、CT検査にも偽陽性が存在する。また、CTにより脳損傷と診断されても、早急な介入が必要でない患者が少なからず存在する。一方で、CT検査は、医療被曝による癌発生リスクをもたらすという側面もある。CT検査を受けた小児1000人に1人から5000人に1人の割合で、致死的な癌が発生するという報告もある。

 そこで著者らは、ciTBIである可能性が非常に低い、CT検査が不要な小児を見分けるために、前向きコホート研究を行い、正確で一般化が可能な予測基準の作成と確認作業に取り組んだ。

 基準の適用対象は、軽症に見えるがCT検査が適用される割合が高い、Glasgow Coma Scale(GCS:15点満点でスコアが低いほど重症)が14~15の小児とした。この集団へのCT検査の適用率は高いが、脳損傷が検出される頻度は10%未満で、脳外科手術が必要な患者はまれだ。

 低年齢ほど放射線の影響を受けやすく、言葉によるコミュニケーションが難しいこと、より年齢の高い小児とは外傷の発生状況が異なることから、2歳未満と2歳以上の患者を分けて基準を作成した。

 ciTBIは、外傷性脳損傷による死亡のほか、脳外科手術、24時間を超える挿管、CT上で脳損傷が認められ2晩以上の入院が必要、と定義した。

 鈍的頭部外傷発生から24時間以内に北米の25の救急部門を受診した、18歳未満の患者4万2412人(平均年齢7.1歳)から、予測基準を誘導するためのコホート(3万3785人)と確認するためのコホート(8627人)を選んだ。全体のうち2歳未満は1万718人だった。誘導コホートは2004年6月から06年3月まで、確認コホートは06年3月から9月まで登録を実施した。

 外傷発生状況の内訳は、高所からの転落が1万1665人(27%)、立った状態での転倒または本人が走っていて動かないものに衝突したケースが7106人(17%)、自動車事故関連が3717人(9%)、頭部にものが当たった患者が3124人(7%)、暴行の被害者が2981人(7%)、スポーツに関係する外傷は2934人(7%)、階段からの転落が2858人(7%)、自転車事故または自転車乗車中の衝突・転倒が1668人(4%)、歩行中に自動車事故に遭った患者が1303人(3%)など。これらの患者のうち4万1071人(97%)はGCSスコアが15だった。

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