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NEJM誌から
ラサギリンがパーキンソン病の進行を抑制か
1mgラサギリンを用いた早期治療の有効性を示唆

 B型モノアミン酸化酵素阻害薬のラサギリンが、治療歴のないパーキンソン病患者において病気の進行を遅らせる効果があることを示唆する研究結果が、米Mount Sinai医科大学のC. Warren Olanow氏らにより報告された。論文は、NEJM誌2009年9月24日号に掲載された。

 ラサギリンは、米国などでパーキンソン病患者の対症療法に用いられている。さらに、動物モデルでは神経保護効果も示されていることから、この薬剤がパーキンソン病の進行抑制にも有用ではないかと考えた著者らは、ラサギリンの疾患修飾作用を調べるため、2重盲検の無作為化多施設試験ADAGIOを行った。

 病気の進行を遅らせる作用の有無を評価するのは難しいため、著者らは、早期に治療を開始した群と遅れて開始した群を比較する方法を用いることにした。遅延治療群に比べ早期治療群で病気の進行が遅ければ、その薬剤には疾患修飾作用があると考えられるためだ。

 診断から18カ月以下で治療歴のない30~80歳のパーキンソン病患者1176人(平均年齢62.2歳、診断から平均4.5カ月経過)を、14カ国の129医療施設で登録。無作為に以下のように割り付けた。ラサギリン1mg/日または2mg/日を72週間投与(早期治療群、288人を1mg、293人を2mgに割り付け)、または偽薬を36週間投与した後にラサギリン1mg/日または2mg/日を36週間投与(遅延治療群、300人を1mg、295人を2mgに割り付け)。他のパーキンソン病治療薬の使用は許可しなかった。

 ベースラインと4、12、24、36、42、48、54、60、66、72週目に統合パーキンソン病評価尺度(UPDRS:176ポイントを最高とするスケール、ポイントが高いほど重症度は高い)を用いて評価した。

 ベースラインからのUPDRSの変化に基づいて、偽薬、早期治療、遅延治療のパーキンソン病への影響を評価した。主要エンドポイントは、早期治療群において以下の3項目のすべてが達成されることとした。

1)12週目から36週目までのスコアの変化率が偽薬群に優る
2)ベースラインから72週までのスコアの変化が遅延治療群に優る
3)48週から72週までのスコアの変化率が遅延治療群に比べ非劣性

 患者のベースラインのUPDRSスコアの平均は20.4だった。

 早期治療群で1mgを投与された患者グループは、3つの主要エンドポイントをすべて達成した。

 1)UPDRSスコアは、12週から36週の間に両群(1mg早期治療群、偽薬群)ともに上昇。週当たりの変化(悪化)率(±SE)は、早期治療群0.09±0.02/週、偽薬群は0.14±0.01/週(p=0.01)。

 2)72週時のスコアは、ベースラインに比べ1mg早期治療群で2.82±0.53上昇、1mg遅延治療群では4.50±0.56上昇(p=0.02)した。

 3)48週から72週までのスコアの週当たりの変化率は、1mg早期治療群0.085±0.02/週、1mg遅延治療群0.085±0.02/週。非劣性のマージンは、これら変化率の差の95%信頼区間の上限が0.15未満に設定してあった。両群間の変化率の差は0.00±0.02、95%信頼区間は-0.04から0.04で、非劣性が示された(p<0.001)。

 2次エンドポイントに設定された、ベースラインから36週までのスコアの変化は、1mg早期治療群1.26±0.36、偽薬群4.27±0.26で、差は有意だった(p<0.001)。

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