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【新薬】「エルネオパ1号輸液」「同2号輸液」
世界初、5種類の微量元素を含んだ高カロリー輸液

2009/10/09
北村 正樹=慈恵医大病院薬剤部

「エルネオパ1号輸液」「同2号輸液」の添付文書(2009年9月改訂・第2版)より。

 2009年9月28日、高カロリー輸液製剤の「エルネオパ1号輸液」「同2号輸液」が発売された。本剤は、世界で初めて、5種類の微量元素(亜鉛、鉄、銅、マンガン、ヨウ素)を配合した高カロリー輸液製剤である。

 本剤は、混合調製をワンプッシュで瞬時かつ無菌的に行うことができるキット製剤である(図)。具体的には、ダブルバッグの上室(ブドウ糖、微量元素[I]、水溶性ビタミンおよび電解質)の中に、小室V(水溶性および脂溶性ビタミン)と小室T(微量元素[Zn、Fe、Cu、Mn])が設けられており、下室(アミノ酸、水溶性ビタミンおよび電解質)と併せて4室で構成される「クワッドバッグ」構造となっている。

 高カロリー輸液療法(TPN)は、消化管経由の栄養補給が不能または不十分な患者への栄養補給として普及し、消化管手術後患者や重症疾患患者の治療成績を著しく向上させてきた。TPN用の製剤も近年、糖・アミノ酸および総合ビタミン液を一剤化したトリプルバッグ型キット製剤(ネオパレンなど)が発売され、その有用性が高く評価されている。

 しかし最近、TPNでは、微量元素が生体内の物質代謝や生理機能に密接に関与していることが注目され、実際に国内では、長期TPN管理下で銅欠乏症を発症した症例が報告された。その後、米国静脈経腸栄養学会(ASPEN)から、静脈栄養施行時における各種微量元素の1日推奨投与量が提示され、日本静脈経腸栄養学会(JSPEN)でも、TPN施行時にはルーチンに微量元素を付加することが推奨されている。しかし、そのためには、微量元素製剤を用時混合せざるを得ず、現場では、入れ忘れ、混合時の衛生管理、混合調製後のビタミン類などの安定性などが問題となっていた。

 今回発売されたエルネオパ輸液は、従来のネオパレン輸液に微量元素が配合された製剤である。ブドウ糖、電解質、アミノ酸、ビタミン、微量元素がバランスよく一剤化され、ガスバリア性に優れたバッグで混合後のビタミン類の安定化が図られている。

 本剤の登場により、微量元素やビタミンの用時混合調製が不要になることで、入院時だけでなく在宅中心静脈栄養(HPN)にも使用が可能となることは、患者にとっても、医療従事者にとっても、大きなメリットとなる。なお添付文書では、重大な副作用として、アシドーシス、ショック・アナフィラキシー様症状、高血糖への注意が喚起されているので、使用時には十分に注意したい。

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