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NEJM誌から
南半球の新型インフルICU入院患者、3分の1は基礎疾患なし
9%が妊婦、65%が機械的人工換気を要する

 冬期が終わった南半球から、これから冬を迎えようとしている北半球の各国に、新型インフルエンザ2009 H1N1に関する価値のある情報がもたらされた。The ANZIC Influenza InvestigatorsのメンバーであるオーストラリアRoyal Perth病院のSteven A.R. Webb氏らは、2009年冬期にオーストラリアニュージーランドのICUに入院した2009 H1N1確定例について分析し、入院患者の9%が妊婦であったこと、65%が機械的人工換気を必要としたことなどを明らかにした。詳細は、NEJM誌電子版に2009年10月8日に報告された。

 オーストラリアとニュージーランドの2009年6月から8月までのH1N1罹患率は、同時期の米国の約8倍になり、病院業務、特に集中治療部門での業務に対する負荷が高まった。

 これからの季節、2009 H1N1の本格的流行に対する治療戦略を模索する北半球の先進国にとって、同様のレベルの医療システムを有する南半球の国の経験は大いに参考になるはずだ。特に、集中治療部門への負荷を予測し、対応の準備を進めることは非常に重要と考えられる。そう考えた著者らは、オーストラリアとニュージーランドで2009年6月から8月までの間にICUに入院した2009 H1N1感染確定例に関する情報を収集、分析することにした。

 著者らは2009年冬期に、両国のすべてのICU(小児ICUも含む187施設)で発端コホート研究を実施した。ICUの総床数は1879床で、機械的人工換気装置を計1449台保有している。

 電子化された症例報告から、入院日時、年齢、人種、性別、妊婦または分娩から28日未満か否か、併存疾患、BMI、症状発現日、インフルエンザの症状(肺炎、急性呼吸窮迫症候群、二次性細菌性肺炎、喘息または慢性閉塞性肺疾患の増悪など)、ICU入院時の気道の状態(気管内挿管、気管切開、酸素マスク、その他の人工気道)などのデータを抽出した。臨床転帰の追跡は2009年9月7日まで行った。

 2009年6月1日から8月31日までに、A型インフルエンザ感染により両国のICUに入院した患者は856人。うち、PCRまたは血清学的検査により2009 H1N1感染確定例と判定された患者は722人(84.3%)だった。確定例のICU入院は、住民100万人当たり28.7人(95%信頼区間26.5-30.8人)に相当した。

 なお、同時期に季節性H1N1に感染してICUに入院した患者は37人だった。

 2009 H1N1確定例722人の年齢の中央値は40歳で、92.7%(669人)は65歳未満だった。患者を年齢に基づいて層別化(1歳未満、1~4歳、5~24歳、25~49歳、50~64歳、65歳以上)したところ、100万人当たりのICU入院率が最も高かったのは1歳未満、入院者数が最も多かった年齢層は25~49歳だった。

 なお、全体の9.1%(66人)は妊婦だった。オーストラリアとニュージーランドの人口に占める妊婦の割合は約1%であるため、妊婦が重症化しやすいことが確認された。

 BMIが記録されていた成人患者601人のうち、172人(28.6%)は35超だった。この地域の一般集団におけるBMI 35超の人の割合は5.3%との報告がある(2003年のデータ)ため、肥満もまた重症化の危険因子であることが示された。

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