慢性硬膜下血腫の外科的除去後の再発率は5~30%と報告されている。英Cambridge大学のThomas Santarius氏らは、穿頭ドレナージによる血腫排出後にドレーン留置を行うと、術後6カ月間の再発と死亡が有意に減少し、それ以外にも患者に利益が見られることを無作為化試験により明らかにした。論文は、Lancet誌2009年9月26日号に掲載された。
慢性硬膜下血腫の除去に主に用いられているのは、ツイストドリルドレナージ(直径5mm未満の孔を作製し血腫を除去)、穿頭ドレナージ(5~30mmの孔を開け血腫を除去)、開頭術の3つだ。過去に行われたメタ分析では、これら3通りの方法の死亡率は2~4%で差はないこと、合併症発生率は開頭術が高く、再発率はツイストドリル法が最も高いことが示されている。
現在、世界で最も多く用いられているのは、血腫の上に1~2つの孔を作製して血腫を排出させる穿頭ドレナージ術だ。この方法で血腫を除去した後にドレーンを留置すると再発が減るのではないかとの予測はあったが、無作為化試験による明確なエビデンスはこれまでなかった。
英国では多くの外科医がドレーン留置を行っていない。著者らはその理由を、ドレーン留置が患者にもたらすリスクに対する懸念とエビデンス不足にあると考え、穿頭ドレナージ後のドレーン留置の有効性と安全性を評価する無作為化比較試験を行った。
英国の1施設で、2004年11月に患者登録を開始。症候性の慢性硬膜下血腫と診断され、穿頭ドレナージが適用されることになった18歳以上の患者269人(平均年齢76.8歳、男性が160人)を登録した。
ベースラインで、日常生活の状態、医療歴などを尋ねるとともに、Glasgow Coma Scale(GCS、スコアが低いほど重症)、修正Rankinスケール(MRS、0は症状なし、6は死亡)を用いた評価も行った。
患者の血腫上に14mmの穴を約7cm離して2つ開け、貯留物を排出させ、乳酸リンゲル液50mLを用いて洗浄した。この段階でドレーン留置が可能と判断された患者を対象にブロック無作為化を行い、硬膜下腔にドレーンを留置(108人)またはドレーン留置なし(107人)に割り付けた。
留置なし群については、硬膜下腔を乳酸リンゲル液で満たして頭皮を閉じた。ドレーン留置群の硬膜下腔も乳酸リンゲル液で満たし、ソフトシリコン製のドレーン(直径4.7mm、長さ90cm)を挿入して頭皮を縫合、48時間留置後にドレーンを抜去した。
6カ月後、患者に質問票を送付し、日常生活の状態を尋ね、MRSを用いた評価を行った。
海外論文ピックアップ Lancet誌より
Lancet誌から
慢性硬膜下血腫への穿頭ドレナージ後のドレーン留置は有効
術後6カ月間の再発と死亡が有意に減少
2009/10/15
大西 淳子=医学ジャーナリスト
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