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アメリカにおける病院と医師の関係

2009/10/13
加藤友朗

 皆さん、こんにちは。アメリカのコロンビア大学で外科医をしています加藤友朗です。私の専門は肝臓や小腸の移植ですが、その他に腫瘍切除の手術もしています。2008年に長年勤めたマイアミの地を離れ、ニューヨークにやってきました。

 ニューヨークやボストンといったアメリカの東海岸で仕事をしていた人が、同じ東海岸の南端にあるマイアミに移るのはよくあるパターンですが、反対にマイアミからニューヨークに移る人はあまりいません。「何でそんなことしたの?」(How could you do that ?)とよく聞かれます。ニューヨークの喧騒に疲れストレスに苦しんだ人たちが、生活を楽しむために温暖な地に移るのが一般的だからです。

 マイアミでは小児の移植外科を中心に仕事をしていましたが、ニューヨークに移ってからは、大人の手術をする機会が増えました。

 私のことを子どもの外科の専門家と思われている方が多いのですが、私はもともと大人の一般外科の研修をしてからアメリカに渡りました。マイアミでも初めにやっていたのは主に大人の肝臓移植です。ある程度大人の移植を経験した後、当時のボスに「小児の移植を専門にしてみないか」と勧められ、子どもの移植を始めました。ただ、子どもの移植は数が少ないので、少し物足りなく感じます。そのため、子どもの移植の専門家になってからも、大人の手術は常に続けていました。このように、子どもを専門にしつつも大人の移植もするというのは、私に限らず、子どもの移植の専門家にはよくあることです。ただし、小児外科から外科を始めて移植医になった人の場合は、小児外科をしながら子どもの移植だけを担当しているという場合もあります。

 さて、このブログでは、医師・患者関係を中心に、よりよい安全な医療を提供するためにアメリカで行われている様々な取り組みや、アメリカの医療環境の中で、今まで私がやってきたことなどを書き綴っていきたいと思っています。そしてブログを通して、皆さんと一緒に、医師として患者さんとよりよい関係を築くにはどうすればよいかを考えていきたいと思います。

 第1回目は、アメリカにおける病院と医師の関係について書こうと思います。アメリカにおける病院と医師の関係は日本とはだいぶ違っていて、これが分からないとアメリカの医療を理解するのは難しいからです。

病院に雇われている研修医―ハウス・スタッフ
 みなさんは、もちろんレジデントresident研修医)という言葉をご存知だと思いますが、このresidentという言葉のいわれをご存知でしょうか。

著者プロフィール

加藤 友朗

コロンビア大学医学部外科教授
/New York Presbyterian Hospital肝小腸移植外科部長

1963年東京生まれ。87年東京大学薬学部卒業、91年大阪大学医学部卒業。大阪大学にて臨床研修(一般外科)修了後、95年に渡米しマイアミ大学移植外科へ(クリニカルフェロー)。97年同大学外科助教授。2000年に帰国し、大阪大学消化器外科助教に。このとき日本での生体肝移植に携わる。03年に再び渡米、マイアミ大学に戻る(外科准教授)。07年同大学外科教授。08年に現在のコロンビア大学外科へ。09年同大学外科教授。

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