※今回の記事は村上龍氏が編集長を務めるJMM (Japan Mail Media)10月7日発行の記事(「現場からの医療改革レポート 第41回『新型インフルエンザに対するワクチン接種の基本方針』を読む」)をMRIC用に改訂し転載させていただきました。
10月1日、政府は新型インフルエンザに対するワクチン接種の基本方針を発表しました。過去の連載で、新型インフルエンザ対策については民主党と厚労省医系技官の対立が明らかで、民主党政権の実力を占う試金石だと述べてきました。
結論から申し上げますが、長妻厚労大臣は医系技官に言いくるめられた感じです。主な論点をご紹介しましょう。
【ワクチンの確保は十分か】
厚労省によれば、合計7,700万人のワクチンが確保出来る見通しです。具体的には、2700万人分の国産ワクチンを、10月19日の週から接種開始する予定です。また、年度内に5,000万人分の輸入ワクチンを確保し、12月末から1月にかけて輸入を開始するようです。
日本の人口は1億2700万人ですから、年内に人口の20%に接種し、将来的に約60%の国民に対するワクチンを準備することを目指しています。他の先進国もワクチン確保には必死です。例えば、8月25日のロイターによれば、米国は10億ドル以上をワクチン購入予算に割り振り、年内に1億6000万人(人口の50%)に接種を終える予定です。
また、イギリスは人口の半分である3,000万人を対象に、来年初めまでに接種を完了する予定です。英米ともに、さらにワクチンを確保するように交渉中です。また、フランスはワクチン9,400万回分(1人2回接種として、人口の77%相当)を注文し、カナダも5,000万回分(人口の78%相当)を確保しようとしています。
欧米先進国と比べ、我が国のワクチン確保量は、やや見劣りする程度です。問題は、欧米先進国より準備が遅れていることです。各国とも、年明けまでには国民の半分程度には接種を終える予定ですが、我が国は20%に過ぎません。新型インフルエンザの流行時期を考えれば、我が国のワクチン備蓄体制には大きな問題がありそうです。
私の視点 from MRIC
「新型インフルエンザに対するワクチン接種の基本方針」を読む上昌広(東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門准教授)
2009/10/16
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