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BMJ誌から
精神疾患はその後の肥満リスクを高める、逆は真ならず
英国で行われた前向きコホート研究の結果

 うつ病不安障害がその後の肥満リスクを高めるのか、反対に、肥満者がうつ病や不安障害になりやすいのか―。この問いを検証するため、前向きコホート研究を行った英London大学のMika Kivimaki氏らは、精神疾患があると肥満リスクが高まること、その逆の関係は認められないことを示した。詳細は、BMJ誌電子版に2009年10月6日に報告された。

 これまでに、うつ病、不安障害などの一般的な精神疾患が肥満リスクを高める可能性が示されているが、これを否定する研究結果もあった。反対に、肥満が精神疾患リスクを上昇させると仮定して行われた研究も複数あるが、やはり一貫した結果は得られていない。

 肥満と精神疾患の関係に影響を与える要因は数多く存在するため、これら仮説の検証は難しいが、公衆衛生的観点から見れば、肥満患者と精神疾患患者の増加は重要な問題であり、予防と治療の戦略を打ち立てるためにはこれらの関係を明らかにする必要があった。

 そこで著者らは、前向き研究により、精神疾患が肥満リスクを高めるのか、反対に肥満が精神疾患リスクを高めるのかを明らかにし、用量反応関係が存在するかどうかについても評価しようと考えた。

 分析の対象にしたのは、前向きコホート研究Whitehall IIに1985~88年に登録されたロンドン在住の公務員だ。

 精神健康調査(GHQ)を用いた精神的な健康に関する評価と身長体重測定を、1985~88年(第1回=ベースライン)、91~93年(第2回)、97~99年(第3回)、2003~04年(第4回)に受けていた4363人(28%が女性、平均年齢44歳)を選出した。

 GHQは、それぞれの症状があるかないかを問う、30項目からなる質問票だ。スコア5以上をケース(症例)とした。

 肥満はBMIが30以上、過体重は25~29.9とした。

 さらに、交絡因子候補として、ベースラインの年齢、人種、婚姻状態、社会経済的地位、喫煙歴、飲酒量、身体活動レベル、収縮期血圧、拡張期血圧、総コレステロール値、糖尿病、冠疾患に関する情報を得た。

 分析1は、精神疾患がその後の過体重、肥満の危険因子であることを検証するために設計された。

 第1回、第2回、第3回のGHQ評価でケースと判定された回数に基づいて、対象者を4群(ケース判定0回、1回、2回、3回)に分けた。多変量ロジスティック回帰分析により、4回目の評価時の肥満または過体重判定と、それ以前のケース判定との関係を評価した。

 分析2は、肥満がその後の精神疾患の危険因子であることを検証するために設計された。

 第1回、第2回、第3回の評価時に肥満と判定された回数に基づいて、対象者を4群(肥満判定0回、1回、2回、3回)に分けた。多変量ロジスティック回帰分析により、4回目のGHQにおいてケースと判定されることと、それ以前の肥満判定との関係を調べた。

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