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H1N1の生ワクチンを次女の鼻にピュッ

2009/10/26

 ボストンでは連日ラジオで新型インフルエンザH1N1のワクチンが米国内で販売開始となったニュースが流れています。ここマサチューセッツ州でも10月5日付で一般の薬局に配備されたとの報道がありました。この5カ月で2万例のH1N1感染者が報告されたマサチューセッツ州では、今後数カ月で感染者が増加するとの予測に基づき、ワクチンが十分行き渡るかどうか懸念されています。

 ハーバードでのH1N1対策はどうでしょうか。HSPH(ハーバード公衆衛生大学院)では9月9日に感染症疫学の教授によるH1N1レクチャーがあり、これまでのアメリカ政府、そしてCDC(疾病対策センター)の専門家による流行把握がいかに「underestimate(過小評価)」だったかという話から始まりました。H1N1による死亡率を計算する際にも、死亡者数の報告に遅れがあると分子が小さくなりますから、H1N1の毒性が強くないという報告につながります。

 今後、秋・冬のシーズンに向けてどのように流行を予測するのかという問題に関して、アメリカでは医療機関への受診が難しいため、これまでよりも慎重に「number of hospital visit(受診者数)」だけでなく、「sick(体調が悪い人)」を把握する必要があると述べていました。また、流行地域の受診者数よりも、その土地に旅行して帰国した後の渡航者の中で罹患率を計算する方が流行状況をより正確に表している可能性があるという説明も興味深いものでした。レクチャーでは具体的な調査方法も示されました。

 アメリカは目下、深刻な経済不況にあり、仕事を休むとその分の給料がもらえなくなる人も多く、H1N1の疑いがあっても仕事を休めないというファクターも大きいようです。「sick day(病欠)」をきちんと取るよう呼び掛けよう、というHealth Communication専門家からの話もありました。

 さて、わが家では「予防が肝心」と子供たちへの季節性インフルエンザワクチンを9月8日にChildren’s Hospital Bostonで接種していました。Harvard Medical Areaでは職員に対する季節性インフルエンザワクチン投与を9月30日からエリア内の様々な場所で行っており、職員・学生であれば無料で受けられます。

著者プロフィール

吉田穂波(ハーバード公衆衛生大学院リサーチフェロー)●よしだ ほなみ氏。1998年三重大卒後、聖路加国際病院産婦人科レジデント。01年名古屋大学大学院。ドイツ、英国、日本での医療機関勤務などを経て、08年ハーバード公衆衛生大学院。10年より現職。

連載の紹介

吉田穂波の「子育てしながらハーバード留学!」
米国ハーバード公衆衛生大学院で疫学の研究に従事する吉田穂波氏が、日米を往き来しながらの研究生活、子育て、臨床現場への思いなどを、女性医師として、産婦人科医として、4人の子の母親として、肌で感じたままにつづります。

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