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ACR/EULAR2009クライテリア登場!
最新薬物療法の恩恵生かす早期診断基準が今こそ必要だった

2009/10/22
宇田川 久美子=医学ライター

英国関節炎研究基金のAlan J. Silman氏

 米国リウマチ学会ACR)が1987年に策定した関節リウマチRA)鑑別基準「ACR1987クライテリア」が22年ぶりに改訂された。新基準は改訂の域を超えた抜本的な意識改革の産物だ。なぜ今、こうした改革が必要だったのか。新基準の策定に携わってきた英国関節炎研究基金(Arthritis Research Campaign)のAlan J. Silman氏は、米フィラデルフィアで開催されている米国リウマチ学会年次学術集会ACR2009)で10月18日、改訂の必要性と理念について語った。

 ACR1987クライテリアは、朝のこわばりや3つ以上の腫脹関節、手関節の腫脹など、7項目のうち4項目以上を満たした場合、RAと診断する。RA患者と他の関節炎患者を比較したエビデンスに基づく科学的な基準として、わが国を含めた全世界で広く用いられてきた。

 しかし、この基準に示された徴候は、ある程度進行したRAにみられるもの。このため、発症から間もないRA患者に適用すると、感度は高いものの、特異度は5割に満たないことが報告されている。RAであることの確認には有用でも、早期発見には適していないのである。

 実際、1987クライテリアの根拠になった米テキサス大学ヒューストン健康科学センター内科教授(当時)のFrank C. Arnett氏らの研究は、262人のRA患者を対照群と比較しているが、RA罹患期間は平均7.7年だった。

 RAの病像が確実に形成されるには、発症から半年~1年を要するが、RAの薬物療法が飛躍的に進歩した現在では、メトトレキサートや生物学的製剤による治療を早期から行うことで、疾患の進行を遅らせることができ、寛解導入率も大きく向上させることができる。そのため、できるだけ早く的確な診断を下し、適切な治療を開始することが望ましい。新基準策定の目的も、まさにそこにあった。

 しかし、軽度の関節炎を認めた段階で、一過性の滑膜炎なのか、それとも将来的にRAに移行するのかを、臨床像だけから見分けるのは困難である。そこでSilman氏らの基準策定グループは、3000例超の新規RA発症例について、詳細な臨床データと検査データを集積、患者の転帰を追跡して、不良な転帰と相関する因子を検索するというアプローチを採用した。

 こうして作成された今回の新基準は、確立したRAを見出すものではなく、RAに進行するリスクのある患者を見出すことに焦点を当てた。分類基準から早期診断基準へ転換を図り、早期治療に活用することを狙ったものである。

 RA治療の焦点がより早期に移行し、治療のゴールが症状の安定から寛解、治癒へと推移しつつある昨今の情勢を考えると、今回の改訂は必然だったと言えよう。

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