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BeSt試験6年目の成績:51%が寛解、17%がドラッグフリー寛解を維持

2009/10/23
宇田川 久美子=医学ライター

オランダ・ライデン大学のNaomi B. Klarenbeek氏

 関節リウマチRA)に対する早期からの積極治療の重要性を世に知らしめたBeSt試験の最新成績が報告された。508例の参加者のうち8割以上が、6年を過ぎた今も脱落することなく追跡下にあり、そのうち51%が臨床的寛解、17%がドラッグフリー寛解を維持しているという。米フィラデルフィアで開催された米国リウマチ学会年次学術集会ACR2009)で、オランダ・ライデン大学のNaomi B. Klarenbeek氏らが発表した。

 BeSt試験は、発症から2年以内のRA患者を対象に、(1)メトトレキサートMTX)単剤→他のDMARDsに変更(第1群、n=126)、(2)MTX単剤→他のDMARDsを追加(第2群、n=121)、(3)当初からMTXとスルファサラジンSSZ)、ステロイドを併用(第3群、n=133)、(4)当初からインフリキシマブIFX)とMTXを併用(第4群、n=128)という4つの治療戦略を比較した。

 これまでの解析から、当初から多剤を併用する「トップダウン治療」を行った第3群と第4群では、わずか3カ月で著明なHAQスコアの改善が認められたのに対し、単剤から開始する「ステップアップ治療」を行った第1群と第2群では、同様の効果が得られるまでに約1年を要し、その間に関節破壊は進行していたことなどが明らかにされている。

 しかし、年余を重ねるにしたがい、当初のレジメンでは病勢をコントロールしきれなくなるケースが増え、1~3群でも10%前後の患者にIFXが投与されるなど、各群の治療内容の違いが少なくなりつつある。これに伴い、ここ数年は各群とも良好にHAQスコアが保たれ、関節破壊にもドラスティックな進行がみられない状態が続いていた。

 そうしたなかで注目されるのが、長期寛解、さらにはドラッグフリー寛解の可能性だ。今回の解析では、DAS<1.6の状態が6カ月以上持続する「臨床的寛解」にある患者が51%を占め、しかも17%の患者が薬物治療を必要としない「ドラッグフリー寛解」にあることが明らかにされた。なお、各群におけるドラッグフリー寛解率は、第1群15%、第2群16%、第3群14%、第4群19%であり、有意差はなかった。ドラッグフリー寛解にある患者のSharpスコア(関節破壊の指標で、大きいほど悪化)は、1年間にわずか平均0.13ポイントしか増加していなかった。すなわち、ドラッグフリー寛解を達成できれば、関節破壊の進行はほぼ完全に抑制できることが示されたことになる。

 以上の結果から、早期RAは適切な治療を行えば、6年後には半数が寛解を達成・維持することができ、ドラッグフリーも夢ではないことが示された。しかし、最終的なドラッグフリー寛解達成率は同等であっても、第1・2群と第3・4群では最初の1、2年に進行した関節破壊の程度に大きな違いがあり、その差は6年後にも埋まることはなかった。したがって、将来にわたって良好なQOLを担保するためには、やはり早期から積極的な治療を考慮すべきだといえよう。

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