●はじめに
「驚かないで聞いて下さい。トポテカンが承認取り下げになりました。」医薬品業界紙の記者さんからの電話取材は、このような言葉から始まりました。2008年10月のことです。
私は耳を疑い、すぐに日本化薬に電話をしましたが、「そのような事実はない」とコールセンターから電話をまわされた学術担当はいいました。しかし残念なことに、その後、当局に確認したところ、「承認の取り下げは事実」と回答がありました。
●トポテカンと卵巣がん
トポテカンは、グラクソ・スミスクライン(GSK)が開発した植物性アルカロイドに分類されるトポイソメラーゼ阻害剤です。日本では、グラクソ・スミスクラインが2001年に小細胞肺癌の適応で承認を取得し、その後、日本化薬が承認を承継しています。卵巣がんに対しては1996年に海外で承認がされ、その後、世界70カ国以上で承認されておりラグは13年。日本では2007年5月に再発卵巣がんに対して承認申請されました。
日本における卵巣がんは、年間約8000人が罹患し、約4500人が亡くなっています。卵巣がんは自覚症状が乏しく発見が難しいことに加え、日本ではプラチナ耐性やアレルギーが起こった時の治療の選択肢が少ないのが問題とされていました。
NCCNのガイドラインではSingle-agent non-platinum based if platinum resistantとして「Gemcitabine」「Liposomal doxorubicin」「Topotecan」と示されており、日本でも婦人科腫瘍学会が2007年に改定した「卵巣がん治療ガイドライン」で再発卵巣がんに対して同じ治療薬を記載しています。しかし、日本では今年(2009年)4月22日にドキシルが承認されるまで、いずれもが卵巣がんに対しては適応外という状態でした。
私の視点 from MRIC
医学の進歩についていけない医療行政への提言ドラッグ・ラグ13年の「トポテカン」、卵巣がん患者に届くのはいつ?片木美穂(卵巣がん体験者の会スマイリー代表)
2009/10/28
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