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NEJM誌から
急性心筋梗塞後にICDを適用しても死亡リスクは減らず
心臓突然死は減るがそれ以外の心臓死が増加

 急性心筋梗塞後に、死亡回避を目的として埋め込み型除細動器ICD)を用いても、十分な薬物療法を受けている患者の場合には死亡リスク低減は見られない―。そんな知見が、ドイツLudwig-Maximilians大学のGerhard Steinbeck氏らが行った無作為化試験によって得られ、NEJM誌2009年10月8日号に報告された。

 心筋梗塞直後の数週間は、心臓突然死を含む死亡のリスクが大きく上昇する。特に多いのが心室頻拍に起因する突然死だ。

 これまでに行われた複数の無作為化試験で、持続性心室頻拍が見られる患者と、心室性不整脈はない左室駆出分画低下患者の一部に、ICD適用による死亡リスク低減が見られると報告されている。しかし、現在のガイドラインは、急性心筋梗塞発生から40日間は、心臓突然死の予防を目的とするICD適用を差し控える、としている。

 著者らは、死亡リスクが高い急性心筋梗塞患者に早期にICDを適用すれば死亡を減らせるのではないかと考え、これを検証するオープンラベルの前向き無作為化試験IRIS(Immediate Risk Stratification Improves Survival)を実施した。

 複数の医療機関で、1999年6月9日から2007年10月15日まで、ST上昇を伴う、または伴わない18~80歳の急性心筋梗塞患者6万2944人を登録。死亡リスクが高いことを示す以下の基準のいずれかまたは両方を満たした898人を、この試験の対象として選出した:(1) 受診時の心電図において心拍数が90/分以上で、心筋梗塞発生から5~31日の時点の左室駆出分画が40%以下、(2)心筋梗塞発生から5~31日に記録されたホルター心電図のデータが非持続性心室頻拍(150/分以上)を検出。

 898人の内訳は、基準1のみを満たした患者が602人、基準2のみを満たした患者が208人、これら両方を満たした患者が88人となった。

 445人をICD適用と薬物療法、453人を薬物療法治療のみの群に割り付けた。心筋梗塞発生から割り付けまでの期間の平均は13±7日だった。

 主要エンドポイントは全死亡率、2次エンドポイントは心臓突然死、突然死以外の心臓死、心臓死以外の死因による死亡に設定。分析はintention-to-treatで行った。

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