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政権交代で岐路に立たされる日本医師会

2009/11/02

 前回は日本歯科医師会が民主党寄りの姿勢を見せていることをお話ししましたが(2009.10.30「“元カレ”を捨てきれない歯科医師会」)、今回は日本医師会の今後を読んでみたいと思います。

 10月28日の新聞各紙は社説で一斉に、日医の推薦者が1人も中医協の委員に任命されなかったことを論じています。朝日新聞は病院勤務医の待遇改善の実現に向けて進んだと述べ、毎日新聞は政権交代を印象づける人事と評していますが、日本経済新聞は論功行賞に懸念を示しています。

 実際に、長妻厚労相は総選挙で自民党を支持した日医執行部の委員を排除して、民主党を支持した茨城県医師会の理事を中医協委員に任命しました。これはまさに論功行賞であり、別の言い方をすれば、海外で「メリットシステム」と呼ばれる政治任用といってもいいでしょう。

 “抵抗勢力”に厳しく臨むこのような民主党の姿勢は、医療の世界に限りません。民主党幹事長の小沢一郎氏は選挙前から、農産物を含む日米自由貿易協定(FTA)締結を目指す民主党のマニフェストに反対する農協に対し、「我々はどのような状況になっても生産者が生産できる制度を作る。何の心配もない。農協や農業団体は官僚化している。相手にする必要はない」と言い切りました。

 今回の中医協からの日医執行部の排除は、この強面幹事長の方針というより、古いレジームを壊してしまおうという民主党の方針そのものです。まさに政権交代で、日本医師会に真っ向から強烈なパンチが飛んできたというわけです。

 また、日医外しの狙いは、先の小沢幹事長の農協不要論のような抵抗勢力の排除というだけでなく、来年夏の参院選に向けたアピールもあるでしょう。一方、日本医師会は、開業医の地位低下や勤務医の組織率の低さをいわれながらも、政権からカウンターパンチを叩きつけられるほどの存在感をまだ保っているということなのかもしれません。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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