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JAMA誌から
腹部大動脈瘤の血管内手術と開腹手術、2年死亡率に差なし

 腹部大動脈瘤(abdominal aortic aneurysm:AAA)に対する血管内手術と開腹手術の臨床転帰を比較する長期にわたる無作為化試験を進めている米Minneapolis退役軍人医療センターのFrank A. Lederle氏らが、2年間の追跡の結果をJAMA誌2009年10月14日号に報告した。血管内手術群の術後30日死亡または院内死亡は、開腹手術群に比べ有意に少ないが、2年の時点になると両群間の死亡率に差はなくなったという。

 AAAに対する血管内手術は、従来の開腹による治療に比べ低侵襲で、周術期死亡率が低く、ICU入所期間、入院期間を短縮できると報告されている。しかし、再治療の頻度は高く、2年の時点で比較すると、開腹治療に比べ利益は見られないという報告もあった。また、QOL全般の勃起機能に対する影響はこれまで比較されていなかった。

 近年、血管内手術のためのデバイスと技術は進歩している。最新の方法を用いた場合のアウトカムを開腹治療と比較する必要があると著者らは考えた。そこで、術後の追跡を最長9年行い、転帰を比較する試験を2002年に開始した。今回は術後2年の結果を発表した。

 退役軍人医療センター42施設で、血管内手術と開腹手術のどちらも適用可能と判断された49歳以上の患者を選出。(1)AAAの外径が5.0cm以上、または(2)合併する腸骨動脈瘤の外径が3.0cm以上、もしくは、(3)最大径が4.5cm以上で急速に拡大している(6カ月間に0.7cm以上拡大、または12カ月間に1.0cm以上拡大)か破裂リスクの高い嚢状の形態を示す―という条件を満たすAAA患者881人(退役軍人であるため99%以上が男性)を登録。444人(平均年齢69.6歳)を待機的な血管内手術、437人(70.5歳)を待機的開腹手術に割り付けた。

 開腹による治療は各医療施設で日常的に用いている方法で行った。血管内治療は大腿動脈または腸骨動脈からステントグラフトを挿入する方法で行われた。

 追跡受診は術後1カ月、6カ月、12カ月、その後は1年に1回とした。血管内治療群には毎回CT検査と単純X線検査を実施。一方、開腹治療群には1年時に1回だけCT検査の実施を指示した。

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