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どうなる?2010診療報酬改定

シリーズ●どうなる?2010診療報酬改定 Vol.16
「急性期の入院基本料は1点=11円に」
医療崩壊に直面する地方の中小病院への配慮が焦点に

11月11日の中医協・診療報酬基本問題小委員会では、入院基本料の一律引き上げによる急性期入院医療の底上げを求める声が診療側委員から多く上がった。

中央社会保険医療協議会・診療報酬基本問題小委員会が11月11日に開かれ、入院料や認知症対策、在宅医療などに関する診療報酬のあり方が話し合われた。中でも議論が白熱したのは、急性期病院の入院基本料について。

 急性期の入院基本料は2008年度の報酬改定で、勤務医対策などのため10対1入院基本料の引き上げといった改善が図られたが、地方の中小病院を中心に依然として経営が厳しい状況にある。このため、地域医療を再生する観点から、10年度の報酬改定でも大きな争点となっている。

 まず口火を切ったのは、全国公私病院連盟副会長の邉見公雄氏。厚生労働省が先日公表した「医療経済実態調査(実調)」の結果から、15対1入院基本料を算定する急性期病院のグループ以外(7対1、10対1、13対1、特別入院基本料)はすべて赤字経営に陥っていることを指摘。その原因として、これまで様々な資格職の配置、感染・安全管理や個人情報保護法などへの対応が求められてきた一方で、それに対して適切な評価がされてこなかった点を挙げた。その上で入院基本料について、現在1点当たり10円の報酬を11円に引き上げるといった改定を実行し、急性期入院医療全体を底上げする必要があると訴えた。

 これに対して支払い側委員は、急性期病院の苦しい現状には理解を示しながらも、財源の問題から慎重な議論を要望。被保険者代表の委員である勝村久司氏(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、「例えば、看護師以外のスタッフの配置が必要ということであれば、その視点を(報酬面に)反映した方がいいのではないか」と述べ、看護師の配置基準以外の人員基準を設けて加算方式で報酬に差を付ける考え方を提案した。また、厚労省は、かなりざっくりとした試算と断りつつ、入院基本料を一律で1%上げた場合、700億円程度の医療費の増額になるとの推計を示した。

 ただ、診療側委員の多くは、「加算などの形では人材が不足する地方の中小病院ではなかなか算定できず、地域医療の崩壊を食い止められない」(邉見氏)などと、入院にかかる報酬全体の引き上げを一貫して主張。このため意見がまとまらず、今後さらに議論を重ね、一定の方向性を探ることになった。

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