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NEJM誌から
経口薬に加えるインスリンは基礎インスリンから
複数のレジメンを直接比較した無作為化試験の結果

 経口糖尿病治療薬による血糖管理が不十分な患者には、インスリン療法が必要となる。その場合、どのレジメンが安全かつ有効なのだろうか。

 この問いを検証すべく、英Oxford大学のRury R. Holman氏らは、複数のレジメンを直接比較する3年間の無作為化試験を行った。この結果、経口糖尿病治療薬によって十分に管理できない患者には、まず基礎インスリンを適用し、それでもHbA1cの目標値が達成できない場合には、基礎+食前インスリンを用いる方法が有用という結論を得た。詳細は、NEJM誌2009年10月29日号に報告された。

 現在用いられている様々なインスリンレジメンは、達成できる血糖管理のレベルも、体重増加リスク、低血糖リスクもそれぞれ異なる。だが、複数のレジメンを直接比較した大規模研究はこれまでなかった。

 著者らは、2型糖尿病患者に、経口糖尿病治療薬に加えて特定のレジメンでインスリン療法を開始した場合の利益とリスクを比較する、3年間のオープンラベルの多施設試験を、英国とアイルランドの58施設で行った。

 対象として、最大耐用量のメトホルミンとスルホニルウレア(SU)薬を使用していても、HbA1c値が4カ月以上にわたって7.0~10.0%で、18歳以上、2型糖尿病歴が12カ月以上、インスリン治療は受けていない、などの条件を満たした708人(平均年齢61.7歳)を登録。5%の患者はこれら2剤のうちの一方に不忍容で、1剤のみを使用していた。

 無作為に、二相性のインスリンアスパルト(Novo Nordisk社製「NovoMix 30」)を1日2回(235人)、または超速効型のインスリンアスパルト(同、「NovoRapid」)を1日3回食事直前(239人)、もしくは基礎インスリンのデテミル(同、「Levemir」)を1日1回就寝前に使用(必要なら2回、234人)のいずれかに割り付けた。

 初年度に、割り付けられた治療を行っていても高血糖が容認できないレベル(治療開始から24週以降にHbA1c値が10.0%超を示す、または2回の測定で連続して8.0%以上となる)だった場合、または、2年目以降にHbA1c値が6.5%超となった場合には、SU薬に替えて第2のインスリンを適用した。

 具体的には、二相性群には昼食前にインスリンを使用する方法、食前群には就寝前に基礎インスリンを使用する方法、基礎群には3度の食事の直前にインスリンを使用する方法を用いた。いずれも用量の範囲は限定した。

 1年目の受診は2週目、6週目、12週目、24週目、38週目、52週目とし、その後は3カ月おきに受診を求めた。受診前3日間は自宅で血糖値を測定するよう指示した。その結果を基にインスリンの用量を調整。目標は、食前血糖値が72~99mg/dL、食後2時間血糖値が90~126mg/dLに設定した。

 低血糖イベントは、グレード1(血糖自己測定の結果は56mg/dL以上だが症状がある)、グレード2(小さな低血糖イベント。症状があり血糖値が56mg/dL未満)、グレード3(大きな低血糖イベント。手助けが必要な状態)に分類した。

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