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アメリカで日本的「食育」を貫く難しさ

2009/11/16

朝の保育園にセッティングされている「朝食」です。

アメリカで暮らしていて母親として感じる日本との違いの一つに「食育」があります。日本では、子供には手間暇かけて自然な野菜や豆製品、魚を食べさせようという食に対する常識が当たり前のようにあります。働く母親にとって、「母親が子供の栄養・食育に責任を持つもの」「でき合いの食事なんて」「心を込めてすべて手作りで」という雰囲気が強迫観念やプレッシャーになっても困りますが、アメリカ式の食事で育った大人たちが極度の肥満、心疾患、糖尿病を抱えているのを見ると、やっぱりどうなんだろう?と思ってしまいます。

 アメリカに来ると、甘いもの、色のついたもの、手軽に買えるものが子供たちの食生活の中で多くを占めていることに本当に驚かされます。私の子供たちも、保育園でお友だちのお弁当を見て「カップ入りのアップルソースが欲しい」「マカロニ&チーズがいい」「パスタとピザが御馳走」という感覚を刷り込まれてきます。野菜と豆製品を大切にする和食を続けるのが難しく、日本から送ってもらう乾物、レトルト入りの食品、チャーハンの素、中華の素などに随分助けてもらっています。

 また、こちらでは郊外型の大きなスーパーが多いので、週末に食材を買い込み、1週間で使い切るという生活です。毎日近くの青果店に野菜やお豆腐を買いに行くということができません。自ずと保存料が多く使われた食品や冷凍食品、手軽なパスタやピザになってしまいますが、私はできるだけ週末に買った野菜は、直後にまとめてゆで、冷凍庫の中のものを見ながら1週間、家族5人分のお弁当の予定を立てるようにしています。

 それにしても、毎日のお弁当作りは本当に大変です。日本の幼稚園にお子さんを通わせているお母さん方には本当に頭が下がります。アメリカ人のお子さんたちのお弁当は、ほとんどがリンゴ、サンドイッチ、マカロニ&チーズ、割けるチーズ、カップ入りアップルソース、ゼリー、グリンピースとコーンを混ぜたもの…といった、日本でいうおやつのような内容です。私が毎日「彩りとバランスとを工夫して」と考えているのがばからしくなるほど、とっても簡単で、素手でつまんで食べられるものばかりです。

 朝食を食べない子が多いのか、子どもたちが朝8時ごろ保育園へ着くとテーブルに当たり前のようにシリアルが出てくるので、はじめは驚きました。今まで3ヵ所保育園を変わりましたが、どこも同じです。実際に家庭で朝食をとらないのが常識なのか、親と離れるときのさびしさを紛らわせるための作戦なのか分かりませんが、一般的な習慣ではあるようです。

著者プロフィール

吉田穂波(ハーバード公衆衛生大学院リサーチフェロー)●よしだ ほなみ氏。1998年三重大卒後、聖路加国際病院産婦人科レジデント。01年名古屋大学大学院。ドイツ、英国、日本での医療機関勤務などを経て、08年ハーバード公衆衛生大学院。10年より現職。

連載の紹介

吉田穂波の「子育てしながらハーバード留学!」
米国ハーバード公衆衛生大学院で疫学の研究に従事する吉田穂波氏が、日米を往き来しながらの研究生活、子育て、臨床現場への思いなどを、女性医師として、産婦人科医として、4人の子の母親として、肌で感じたままにつづります。

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