日経メディカルのロゴ画像

「副作用被害防止」と「ドラッグ・ワクチンラグ解消」は相反するのか
高畑紀一(細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会事務局長)

2009/11/16

たかはた のりかず氏○千葉大学法経学部卒。2004年、長男がヒブによる細菌性髄膜炎に罹患。ヒブワクチンの存在を知り、細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会の活動に参加。2006年、同会事務局長就任。ワクチン・ラグの解消を求め奮闘中。

煽られる対立関係
 ドラッグ・ワクチンラグの解消を求めて活動していると、「あなたたちはラグ解消を求めるが、一方で副作用被害もあるんですよ」と、「あちらを立てればこちらが立たず、相反する二つのバランスをとらなければいけない」という主張に出くわすことがある。

 ラグ解消を進めると副作用被害が発生しやすくなり、副作用被害への対応を進めるとラグが拡大するという、あたかも「副作用被害防止」と「ドラッグ・ワクチンラグ解消」の双方を実現することは難しいかのように言われるのだ。そして「副作用被害」と「ドラッグ・ワクチンラグ解消」は対立関係にあるかのように煽られることすらある。果たしてこの二つは相反するのであろうか。

 確かにいずれかを「ゼロ」にしようとすれば、それは相反する関係になる。ドラッグ・ワクチンによる副作用被害をゼロにする方法はただ一つ、ドラッグ・ワクチンの使用を全面的に禁止すればよい。この場合、全てのドラッグ・ワクチンがラグの状態におかれる。ラグをゼロにするのなら、世界のいずれかの政府が承認したドラッグ・ワクチンを全て日本で承認すればよい。この場合、副作用の発生リスクは現状よりも格段に高くなる。

 私は、上記のように「ゼロ」を志向するのではない限り、副作用被害防止とドラッグ・ワクチンラグ解消は相反するものではなく、むしろ、いずれをも可能な限り「最小限に抑える」ための方策は、一致するものだと考える。

根源は同じ
 ドラッグ・ワクチンには主作用(効能・効果)と副作用という不可分の作用がある。主作用を期待しドラッグ・ワクチンを使用する以上、副作用は絶対にゼロにはならない。

 そうであるならば、副作用被害を最小限に食い止める方策が重要となる。副作用被害を最小限に食い止めるためには、報告される副作用情報に対して速やかに対応しなければならない。副作用情報を速やかに分析し、迅速に臨床の現場にフィードバックする。

 そのことが副作用の拡大を防ぐと同時に、ドラッグ・ワクチンの安全な使用を維持することにも繋がる。副作用被害を最小限に食い止めつつ、主作用による治療・予防というメリットを最大限に享受する、これがドラッグ・ワクチンの適切な使用の本筋であり、薬務行政が果たすべき役割である。

この記事を読んでいる人におすすめ