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薬事法改正に反撃―日本の医薬品を海外通販で“逆輸入”

2009/11/17

 今年の6月から施行された薬事法改正について、以前このブログで「薬事法改正をビジネスチャンスに―鍼灸師や柔道整復師が薬の販売に参入」と題して取り上げました。今回はその後の新展開についてのお話です。

 話は薬事法改正時のすったもんだにさかのぼります。改正薬事法では、コンビニエンスストアなどでも「登録販売者」を配置すれば風邪薬などの医薬品の販売ができるようになった一方で、ネット販売を含む通信販売ではビタミン剤など、リスクの低い医薬品しか販売ができなくなりました。

 詳しく説明しますと、改正薬事法は、一般用医薬品をリスクの高い順に「第1類」「第2類」「第3類」に分類した上で、それぞれのリスクに応じた販売方法を定めています。最もリスクの高い「第1類」については、薬剤師が書面を用いて情報を提供した上で販売することとし、「第2類」「第3類」の医薬品については、新制度として設けられた「登録販売者」を配置すれば、コンビニエンスストアなど薬局以外での販売も認められるようになりました。

 薬局以外のコンビニなどでの販売の規制が緩和された一方で、ネット販売を含む通信販売は規制が強化されました。厚生労働省では改正薬事法に伴う省令で、医薬品は対面販売を原則とするとして、対面での情報提供が行えない通信販売については、最もリスクの低い「第3類」医薬品のみ販売を認めることにしました。これにより、風邪薬などの「第2類」医薬品は通信販売では購入できなくなったのです(第2類には暫定措置が設けられました)。

 この薬事法改正に対し、医薬品のネット販売を行っている「ケンコーコム」は、改正薬事法の関連省令を違憲として行政訴訟を起こしています。その規制自体が憲法に違反しており無効であるとして国と争っているのです。

 そのケンコーコムが、さらに新しい展開を始めたことで話題になっています。ケンコーコムは9月に、全額出資の子会社をシンガポールに設立しました。日本の医薬品をこの子会社で扱い、東南アジア諸国に在住する日本人向けに販売するほか、医薬品の「個人輸入」という形で日本の消費者からの注文にも対応するそうです。

 厚労省には、薬事法に抵触するかどうか事前に確認済みということですから、新事業を始めるに当たっての準備は万全のようです。個人輸入の形をとれば送料はかかるものの、消費税はかからず、関税もかかりません。国内での通信販売よりは納品までの時間が長くかかるでしょうが、これだけ物流が国際化し、コストも下がればビジネスモデルになり得ると読んでいるようです。

著者プロフィール

竹中郁夫(もなみ法律事務所)●たけなか いくお氏。医師と弁護士双方の視点から、医療訴訟に取り組む。京大法学部、信州大医学部を卒業。1986年に診療所を開設後、97年に札幌市でもなみ法律事務所を開設。

連載の紹介

竹中郁夫の「時流を読む」
医療のリスクマネジメントを考えるには、医療制度などの変化に加え、その背景にある時代の流れを読むことも重要。医師であり弁護士の竹中氏が、医療問題に関する双方向的な意見交換の場としてブログをつづります。

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