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【新薬】イメンドカプセル
アプレピタント:抗癌剤による遅発性の悪心・嘔吐にも効果

2009/11/19
北村 正樹=慈恵医大病院薬剤部

 2009年10月16日、制吐薬アプレピタント(商品名:イメンドカプセル125mg、同80mg、同セット)が製造承認を取得した。適応は「抗悪性腫瘍薬(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)で遅発期を含む」であり、他の制吐薬と併用することが前提となる。

 癌化学療法によって引き起こされる悪心・嘔吐は、患者の苦痛が非常に強く、時に治療継続が困難になる例もあるため、抗癌剤投与時に優先的に解決しなければならない副作用の一つである。副作用で悪心・嘔吐が発現するメカニズムとしては、化学物質受容体(CTZ)の活性化、消化管粘膜からのセロトニン分泌促進による求心性迷走神経の活性化、精神的素因などによる大脳皮質からの刺激経路──などが判明している。また、抗癌剤投与時の悪心・嘔吐は、その発現時期により、24時間以内に発現する「急性悪心・嘔吐」、24時間以降に発現する「遅発性悪心・嘔吐」、次回投薬の直前に発現する「予測性悪心・嘔吐」の三つに大別される。

 癌化学療法時の悪心・嘔吐に対する対症療法薬としては、セロトニン(5-HT)3受容体拮抗薬が広く使用されるほか、ステロイド薬、抗不安薬などが使用されることもある。だが、これら薬剤は、「急性悪心・嘔吐」には有効ではあるが、「遅発性悪心・嘔吐」には必ずしも有効ではないことが課題になっていた。

 今回、承認されたアプレピタントは、世界初の選択的ニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬である。NK1受容体は、神経伝達物質サブスタンスPの受容体であり、サブスタンスPは、嘔吐や痛み、不安、喘息、膀胱炎、片頭痛などの発現に深く関与するといわれている。NK1受容体拮抗薬であるアプレピタントは、サブスタンスPとNK1受容体との結合を選択的に遮断することにより、悪心・嘔吐を抑制するものと考えられている。従来薬とは作用機序が異なることから、他の制吐薬と併用することで相乗効果も期待できる。

 アプレピタントは、国内外の臨床試験で、急性悪心・嘔吐のみならず、既存治療では効果不十分であった遅発期の悪心・嘔吐にも有効であったことが確認されている。現在までに、米国や欧州連合(EU)諸国を含め、世界70カ国以上で承認・販売されている。米国臨床腫瘍学会(ASCO)などが公表している制吐療法ガイドラインでも、抗癌剤投与に伴う悪心・嘔吐の予防薬として記載されている。

 なお本薬は、肝薬物代謝酵素CYP3A4により代謝される薬剤であることから、CYP3A4により代謝をうけるほかの薬剤、特にドセタキセル(商品名:タキソテール)などの抗悪性腫瘍薬との相互作用に、十分な注意が必要である。

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