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JAMA誌から
腹臥位管理はARDS患者に生存利益をもたらさない
イタリアで行われた無作為化試験の結果

 急性呼吸促迫症候群ARDS)患者の一部に対して、また、重症の低酸素症となった患者の救命手段として、腹臥位呼吸管理の適用が推奨されている。しかしこれまで、腹臥位管理の生存利益を示した質の高い無作為化試験はなかった。イタリアIRCCS-Mangiagalli e Regina Elena病院のPaolo Taccone氏らは、非盲検の無作為化試験を行い、人工換気を必要とするARDS患者に対する腹臥位呼吸管理は、生存率向上をもたらさない上に合併症が有意に多いことを明らかにした。詳細は、JAMA誌2009年11月11日号に報告された。

 過去に行われた臨床試験の事後解析で、腹臥位呼吸管理が重度の低酸素症患者とARDSの患者の生存率を向上させる可能性が示されていた。これを確認するために、著者らは、無作為化試験Prone-Supine II試験を実施した。

 Prone-Supine II試験は、ARDSにより中等度から重度の低酸素症となった患者に対する、腹臥位管理の生存利益を評価することを目的に行われた。04年2月から08年6月まで、イタリアの23病院のICU 25施設とスペインの2病院のICUで、ARDSで侵襲的換気を必要とした16歳以上の患者342人(平均年齢60歳、女性は28.7%)を登録。低酸素症の重症度に基づく層別化では、中等度(PaO2/FIO2比が100~200mmHg)が192人、重度(PaO2/FIO2比が100mmHg未満)は150人だった。

 これら342人の患者を、無作為に、人工換気中は腹臥位管理(168人)、または背臥位管理(174人)に割り付けた。

 腹臥位での呼吸管理は1日20時間以上、急性の呼吸不全が消失するまで、または試験期間に設定された28日後まで継続するとした。背臥位群については、生命を脅かすレベルの低酸素症になった場合のみ、救命目的で腹臥位呼吸管理の適用を許可した。

 主要アウトカム評価指標は、登録から28日時点の全死因死亡。2次評価指標は6カ月時とICU退院時の全死因死亡、28日時の臓器不全評価スコア(SOFA)の値、28日間のうち人工換気が不要だった日数、腹臥位管理に関連する合併症発生率などに設定。分析はintention-to-treatで行った。

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