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泣かされるのは、いつも部下

2009/12/07

 本来、上司の発言は重いものです。その決断には、常に責任がついて回ります。

 しかし、近年、自分の発言や判断に対して責任を持たない上司が増えているように思います。それ以上に私が気になっているのは、法や世間の常識に反する決断を下す組織のトップや上司が、決して少なくないことです。古い慣習や身内の論理にとらわれ、企業の利益を追求するあまり、法律に反していることを上司が部下に命令してしまうのです。

 食品メーカーによる賞味期限や産地の偽称などは、今でもしばしばマスコミで取り上げられます。これらの事件の大半は、そうした上司が育んだ組織風土や、上司による命令が引き起こしたものといえます。少し古い話になりますが、2000年に起きた雪印による食中毒事件はその典型例でしょう。

 こうした事件の背景にある大きなキーワードの1つは、「コスト」です。決められた条件の中で利益を上げるには、どこかを削る必要があります。雪印の食中毒事件では、製造ラインの洗浄回数を減らし、無駄を減らすために商品を再利用したと報道されています。コスト削減による利益優先主義の、当然の帰結といえるでしょう。05年4月に起きたJR西日本の福知山線脱線事故も、根本は同じだと思います。

 低価格志向が続く昨今、大手メーカーであっても、利益の確保は簡単ではありません。経営陣から現場責任者、現場責任者から部下への要求も、自然と厳しいものになるでしょう。雪印事件の後も、企業のモラルが問われる事件がたびたび報道されているのは、そうした背景によるのだと思います。

不正行為で罰せられるのは上司だけではない
 医学の世界においても時に、法や世間の常識からすれば信じられないような事件が起こります。組織には古い慣習がつきもので、そのような慣習が、トラブルの大きな原因になりやすいのです。医師という特殊な職種の組織には特に、周囲からの理解を得にくい慣習が多くあるのかもしれません。

著者プロフィール

緑山草太(ペーンネーム)●みどりやま そうた氏。消化器外科医。1988年、東京の医科大学を卒業。2000年、栃木県の国立病院の外科部長。2004年に再び東京の大学病院に戻り、医局長を務める。

連載の紹介

緑山草太の「僕ら、中間管理職」
良い診療も良い経営も、成否のかぎを握るのは中間管理職。辛くとも楽しいこの職務は、組織の要。「良い結果は健全な組織から生まれる」と話す緑山氏が、健全な組織を作るための上司の心得を紹介します。

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