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シリーズ●重症例に学ぶ新型インフルエンザ診療のポイント Vol.3
脳症合併も、後遺症なく回復した13歳男児
患者の低年齢化で予後不良例が増加の恐れ

「インフルエンザの患者で、意識障害が続いたり、複雑型痙攣を呈する場合は脳症を疑い、早めに高次医療機関にコンサルトしてほしい」と話す、神奈川県立こども医療センター神経内科の小坂仁氏。

 新型インフルエンザの合併症で、季節性インフルエンザと同様に注意が必要なのが脳症だ。厚生労働省によると、2009年7月28日から12月1日までに報告されたインフルエンザ脳症は全国で321例に上る。

 11月までは、流行の中心が5歳から14歳の学童にあったため、従来の季節性インフルエンザに比べて年齢の高い小児の脳症例が相次いで報告された。11月24日までに8人の新型インフルエンザによる脳症患者を受け入れた、神奈川県立こども医療センター神経内科部長の小坂仁氏も、「当院でも、これまでのところ比較的年齢の高い5歳以上の脳症例が多い」と語る。

発熱翌日に異常言動と全身強直性痙攣が出現
 小坂氏が経験した、13歳男児の新型インフルエンザによる脳症例を紹介する。この患者には、家族歴、周産期歴、発達歴に特記事項はなく、既往歴として2度の熱性痙攣と気管支喘息があった。第1病日夜に発熱したため、翌日近医を受診し、インフルエンザA型陽性と判明した。

 しかし、加療中に点滴を抜こうとする、母親を認識できないなどの異常言動が出現したため、2次医療機関へ救急搬送となった。搬送中から全身強直性痙攣が群発したため、ジアゼパム、ミダゾラムを投与し、脳症疑いで神奈川県立こども医療センターへ紹介入院となった。

 入院時の体温は42.0℃、心拍数156/分、血圧98/26mmHg、呼吸数30/分、SpO2 100%(O2 3L)だった。胸部X線写真に浸潤影などの異常所見はなかった。

 神経学的所見では、意識レベルはJCS(Japan Coma Scale)100~200と非常に悪く、GSC(Glasgow Coma Scale)でE(Eye opening)1、V(Verval response)2、M(Motor response)1だった。瞳孔は2.5mm/2.5mm、対光反射+/+、項部硬直はなく、四肢筋緊張は正常、両側足関節spasticity(痙直)を認め、深部腱反射は正常、病的反射はなかった。入院時の血液検査では、末梢血液、凝固系、生化学、髄液検査で異常はなかった。

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