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日本医師会の危うさ
小松秀樹(虎の門病院泌尿器科)

2009/12/10

こまつ ひでき氏○1974年東大医学部卒業。虎の門病院泌尿器科部長。著書に『医療崩壊「立ち去り型サボタージュ」とは何か』『医療の限界』がある。

 ある巨大企業の役員と話す機会があった。話の成り行きで当たり前のことを確認した。「会社役員の行動原理として期待されているものは徹底した損得勘定ですよね」「損得のみです。」

 置かれた状況の中で会社の利益の最大化を図り続けることが、企業役員の行動規範である。置かれた状況には、対立者の存在も含まれる。損得勘定では、対立相手の存在を認めた上で自らの行動を決める。損得勘定の対局にあるのが原理主義である。原理主義者は、自分の主張を曲げない。社会に不利益をもたらし、結果として、自分に不利益をもたらす行動をいとわない。

 能力不足も、自分の行動を正しく認識できないため、原理主義と同様、非合理的行動をもたらす。原理主義と能力不足はしばしば区別がつかない。この役員と話しながら、日本医師会について考えた。日本医師会の行動が、合理的に決められていると思えないからである。

 2008年12月1日、公益法人制度改革三法が施行された。日本医師会は2013年11月30日までに公益社団法人か一般社団法人に移行しなければならない。移行に失敗すれば、解散したと見なされる。

 2007年5月、日本医師会は公益社団法人を目指す方針を決めたが、従来の組織形態と活動を可能な限り存続させるという方針を採っている。新しい公益社団法人は、不特定多数の利益の増進(特定の個人や団体ではない)のために寄与し、会計を含めて活動が社会から監視でき、公平な参加の道が開かれ、社員は平等の権利を有し、特定の個人の恣意によって支配されないものとして設定されている。公益認定等委員会で認定されないと公益法人に移行できない。過去の活動も評価の対象となる。

 日本医師会は、開業医の経済的利益を最優先課題としてきた。このため、二重の代議員制度で勤務医の発言を抑圧し、多額の政治資金を特定政党に提供してきた。社会はこれを正しく認識している。

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