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日本人でもEGFR変異陽性の非小細胞肺癌でゲフィチニブが無増悪生存期間を有意に延長【肺癌学会2009】

 EGFR変異陽性の非小細胞肺癌では、ゲフィチニブはカルボプラチン+パクリタキセルに比べて無増悪生存期間を延長させることが、フェーズ3試験IPASSの日本人を対象とした解析で明らかになった。血清遊離DNAを用いたEGFR遺伝子変異解析によるもの。ただし、腫瘍検体との比較で偽陰性率が高く、今後、改良が必要であることもわかった。国立がんセンター東病院の後藤功一氏が11月12日から13日に東京で開催された第50回日本肺癌学会総会で発表した。

 IPASS(IRESSA Pan-Asian Study)試験は、化学療法による治療歴がなく、非喫煙もしくは軽度の喫煙経験者で、腺癌のステージ3B~4期の非小細胞肺癌患者を対象にしたフェーズ3試験。日本、中国、タイ、台湾、インドネシア、マレーシア、フィリピン、香港、シンガポールで実施された。一次治療としてゲフィチニブ(250mg/日)を投与する群(609人)とカルボプラチン(AUC 5~6)とパクリタキセル(200mg/m2)を併用投与する群(608人)を比較した。

 これまでに対象患者全体での無増悪生存期間(PFS)および日本人を対象にしたサブ解析でのPFSが報告されており、いずれもゲフィチニブ群がカルボプラチン+パクリタキセル群に比べて優れていた。また全患者において、EGFR変異陽性群ではゲフィチニブ群が有意にPFSを延長した(ハザード比0.48、p<0.001)が、変異陰性群はカルボプラチン+パクリタキセル群のほうが良好だった(ハザード比2.85、p<0.001)。

 今回の発表では、日本人の血中遊離DNAによるEGFR遺伝子変異の結果が、腫瘍検体から得られた結果と比較して報告された。EGFR遺伝子変異は感度の高いARMS法で測定され、21種類の遺伝子変異を用いて評価された。

 その結果、血中遊離DNAによるEGFR遺伝子変異の陽性群では、ゲフィチニブ群のPFSが有意に優れ(ハザード比0.29、p=0.0009)、全患者における陽性群の結果と同じであった。

 しかし、血清検体194例では変異陽性率は23.7%であるのに対し、腫瘍検体91例では61.5%。腫瘍検体と血清検体の両方の測定が可能だった86例で見ると、腫瘍検体と血清検体の結果の一致率は66%であり、血清検体での偽陽性はなかったが、偽陰性は57%に認められた。

 偽陰性率が高かったことについて、後藤氏は、技術的な問題や血清検体に含まれるDNA量が不足していたことが原因と考え、より多くの血液を使うなどの改良が必要であるとした。また、「肺組織から腫瘍検体を採取することは患者にも負担になる。血清検体を含め代替サンプルによるEGFR遺伝子変異の測定にはさらなる研究が求められる」と述べた。

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