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Anti Thrombotic Therapy.2016

【冠動脈疾患 エキスパートインタビュー】
late acquired malappositionに対する抗血小板療法の実際
名古屋第二赤十字病院 循環器センター部長 平山治雄氏

2009/12/14

名古屋第二赤十字病院の平山治雄氏

 近年、DES薬剤溶出性ステント)留置術後に起こるVLST遅発性ステント血栓症)の原因の1つとして、late acquired malappositionが注目されている。そこで、その病態とステント留置術後の抗血小板療法の実際について、名古屋第二赤十字病院平山治雄氏(写真)にうかがった(日経メディカル別冊)。

―― 最初に、PCI(冠動脈インターベンション)の施行数とその成績についてお聞かせください。

平山 ここ2年間のPCI施行数は年間約600例(待機400例、緊急200例)で、それ以前と比べると200件ぐらい減っています。その理由は、DESの問題点が明らかになり、糖尿病症例と透析症例における多枝病変や左主幹病変などは、長期予後の観点からバイパス術を第一選択にしているからです。

 BMSとDESの比率は6:4ぐらいで、糖尿病症例、2.5mmのステントしか入らない細い血管病変、20mm以上のびまん性狭窄病変、分岐部病変などに対しては、再狭窄を考慮してDESを使っています。また、ACS(急性冠症候群)に対するBMSとDESの有効性を比較したところ、血栓症の発症頻度には差がなく、DESの方が再狭窄は少ないので、ACSに対してもDESを使っています。

 標的病変の再血行再建術すなわちTLRの頻度は、BMS時代は15~20%でしたが、DESになって約5%に減りました。尤もTLR率が高い透析症例では20~25%、糖尿病症例では約10%です。

 ステント血栓症の発症率は、BMSに比べてDESで特に多いことはありませんが、VLSTはDESの方が多く、明らかにVLSTと確認された症例は、今までに4例経験しています。これまでのDES施行例が約1500例ですからVLSTの発症率は約0.3%です。

―― 次に、第一世代DESの問題点とVLSTの原因についてうかがいます。

平山 DESの問題点としては、まず、再狭窄の原因となる平滑筋細胞の増殖抑制作用よりも血管内皮細胞の再生・増殖抑制作用の方が強い点です。つまり、再狭窄を抑制しようとすると、血管内皮の再生が非常に遅れ、再生しても内皮細胞の機能が正常化するのに相当時間がかかります。血管内皮細胞は血栓を予防するさまざまな活性物質を産生・放出していますが、PCIを行うと内皮細胞はほとんどなくなりますので、なるべく早い再生が求められます。しかし、DESを入れると1年半経っても内皮細胞の機能が回復しないという報告があります。

 炎症反応の増悪とその持続も問題になります。BMSに対しても炎症反応が起こりますが、第一世代のDESではポリマーによってさらに強い炎症反応がみられます。図1は同一症例におけるBMS(術後24カ月後)とDES(術後16カ月後)の留置部位で、ステントの周囲にマクロファージが集まり、それがLDLコレステロールを貪食するため、イエロプラークがみられます。一方、ステントスラットが入っていない個所にはイエロプラークはみられません。

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