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「JSH2009ガイドラインの浸透度と活用のコツ」Vol.3
メタボ合併例の扱いはやむなく複雑に
日経メディカル2009年12月号特別編集版「スペシャルレポート」(転載)

2009/12/17
中村 克也=医学ライター

 2009年10月に開催された第32回日本高血圧学会総会の特別企画「JSH2009ガイドラインを検証する」では、公表後の同ガイドラインの認知状況や主な変更点などが紹介されたほか、学会に寄せられた意見を踏まえ、今後の検討課題について議論が交わされた。その中から「糖尿病とメタボリックシンドローム」に関する部分を紹介する。


札幌医科大学第二内科教授の島本和明氏

 札幌医科大学第二内科教授の島本和明氏は、糖尿病やメタボリックシンドロームを合併した高血圧症例のリスク層別化と治療の流れを概説した。同氏によれば、特にメタボリックシンドローム合併高血圧は新ガイドライン公表後に「複雑で分かりにくい」という意見が多く寄せられた個所だという。

 この背景には、メタボリックシンドロームは危険因子の性質や数によってリスク評価が異なる「ファジーな定義」(島本氏)となっていることが挙げられる。そこで新ガイドラインでは、糖尿病を伴わずに危険因子が3つ(腹部肥満と正常高値以上の血圧高値の2つに加えて、脂質異常または血糖高値のいずれか)ある場合を「予防的メタボリックシンドローム」としてリスク層別化の第二層に位置づけた(Vol.1 表1参照)。一方、糖尿病を伴うか、上記の危険因子を4つすべて備えている場合はリスク第三層とした。このため、後者の場合は正常高値であっても高リスクとなる。

糖尿病合併例はRA系阻害薬優先
 メタボリックシンドロームを合併する高血圧では、治療方針についても注意が必要だ。血圧が正常高値で予防的メタボリックシンドロームの範囲であれば、生活習慣の改善で対応し、降圧薬治療の対象とはならない。しかし、正常高値例でも高リスクに該当する場合は、「生活習慣の修正から開始し、目標血圧に達しない場合は降圧薬治療を考慮する」ことになっているからだ。

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