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「JSH2009ガイドラインの浸透度と活用のコツ」Vol.4
CKDを伴う高血圧の管理、早期発見と綿密な経過観察がカギ
日経メディカル2009年12月号特別編集版「スペシャルレポート」(転載)

2009/12/21
中村 克也=医学ライター

 2009年10月に開催された第32回日本高血圧学会総会の特別企画「JSH2009ガイドラインを検証する」では、公表後の同ガイドラインの認知状況や主な変更点などが紹介されたほか、学会に寄せられた意見を踏まえ、今後の検討課題について議論が交わされた。その中から「慢性腎臓病(CKD)」に関する部分を紹介する。


東北大学大学院腎・高血圧・内分泌学教授の伊藤貞嘉氏

 CKDを伴う高血圧の治療管理の進め方と注意点については、東北大学大学院腎・高血圧・内分泌学教授の伊藤貞嘉氏が説明を行った。

 CKDは心血管疾患の重要なリスクとなる新たな疾患概念として近年提唱され、注目を集めている。もっとも、以前のガイドラインでも慢性腎疾患という名称で既に取り上げられており、治療管理の流れには基本的に大きな変更はない。しかし、「CKDの治療管理については、理解されてはいるものの実践できていない点に大きな問題がある」と、伊藤氏は強調した。

 CKDを伴う高血圧に関する新ガイドラインでの主な変更点は、微量アルブミン尿を含む蛋白尿とCKDを心血管病の危険因子としてではなく、心筋梗塞や心不全などと同じく臓器障害の1つに位置づけたことにある。このため、これらを有する場合はリスク第三層に該当し、これらを合併する高血圧は高リスクとして扱われる(Vol.1 表1参照)。

 JSH2009ガイドラインにおけるCKDを合併する高血圧の治療計画の流れは図1に示した通りだ。ただし、このような形で早期から適切な対策を講じていくためには、CKDの早期発見が極めて重要である。このため、新しいガイドラインでは、CKDの早期発見のために、すべての高血圧患者で検尿による尿蛋白の評価と推算糸球体濾過量の算出をルーチンとして行うべきとしている。その上で、CKD患者における降圧療法は、1.降圧目標の達成、2.RA系の抑制、3.尿アルブミン、尿蛋白の減少・正常化──の3つが柱となる。

図1 慢性腎臓病(CKD)を合併する高血圧の治療計画

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