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TNM分類と連動した胃癌取り扱い規約最新版の狙いを報告【胃癌学会2009】

2009/03/09
森下 紀代美=医学ライター

 胃癌取扱い規約第14版は、1999年に発行された第13版から大幅に改訂される予定だ。国際対癌連合(UICC)のTNM分類が同時期に改訂されるため、TNM分類と連動して利用できるようにするのが狙いだ。3月4~6日に東京で開催された第81回日本胃癌学会総会コンセンサスミーティング胃癌取扱い規約とガイドライン」で、癌研有明病院消化器外科の佐野武氏が、胃癌学会の規約委員なども兼務する立場から、TNMとの連動について解説した。

 胃癌取扱い規約とTNM分類は全く異なるシステム。胃癌取扱い規約は、リンパ節(N)定義治療ガイドステージの分類、詳細な病理指針を包括し、1冊で胃癌診療の大きなガイドとなっている。胃癌のほか、臓器ごとに完結した規約が作成されている。

 これに対しTNM分類は、ステージ分類により予後を示すが、治療については一切触れていない。しかし、TNM分類はあらゆる癌を同じ基準で分類するシステムで、病理指針と治療評価を共通のルールのもとに示し、各臓器の特殊性を加えてステージを決定する。

 今回の胃癌取扱い規約の改訂では、ステージ分類をTNM分類に変えることが大きな特徴の一つとなる。さらに同規約中の治療ガイドの部分をガイドラインに移行し、治療評価法のみを残す。Nの定義から、N番号は残すが群分類は削除する。病理指針は変更はあるものの、そのまま残る。ステージ分類と、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST基準)を取り入れた治療評価が国際規約との窓口となり、国際的な比較や情報の共有が可能となる。佐野氏は今回の改訂について、「世界に共通の足場を作るためのものと理解していただきたい」と話す。

 また、日本で蓄積されたデータを凝縮させ、分かりやすい形で世界に広める取り組みも行われる。第1群リンパ節のみの郭清(D1)、第1群および第2群のリンパ節郭清(D2)について、従来の腫瘍占居部位別分類から「幽門側胃切除術」「全摘」など術式別に変更することもその一つだ。
 
 TNM分類の改訂は、UICCとAmerican Joint Committee on Cancer(AJCC)が進めており、年内に出版され、2010年1月に発効する予定。TとNの定義が変わり、その組み合わせであるステージ分類も変わる。

 TNM分類との連動に関しては問題もある。一例として、領域リンパ節の不一致があり、国内では2群とされていたリンパ節のNo.14vが、TNM分類ではM1となってしまう。この点については、郭清の可否は日本独自のガイドラインで詳細に定めていくこととする。ただし、転移があればM1とし、個数はNとしてカウントしない。

 胃癌取扱い規約にTNM分類のステージ分類を取り入れることについて、佐野氏は、「私たちは完全に国際的なスタンスを持つことになる。さらに、複雑だったD1/D2を分かりやすい形でガイドラインに定義することで、優れた胃癌診療を国内外に普及させることができる」と説明している。

 なお、同コンセンサスミーティングには約400人(外科88%、内科7%、基礎4%)が参加、TNM分類に連動することについては、賛成97%、反対2%という結果だった。

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