先日の当ブログで、元東京女子医大日本心臓血圧研究所循環器小児外科助手の佐藤一樹氏の、勇気ある壮絶な闘いを紹介いたしました(こちら)。その後、同氏が「JAMIC JOURNAL」に2008年10月号から連載されている「リヴァイアサンとの闘争 ―正当な治療行為で冤罪にならないために」を通読し、私たちも「冤罪」に巻きこまれないために、同氏の伝言を知っておく必要があると思いました。
佐藤氏の許可をいただき、以下にそのエッセンスを紹介します(詳しい内容は、こちら)。
第1回 冤罪事件経験者からの伝言(「JAMIC JOURNAL」2008年10月号掲載)より
警察・検察の作文が署名・押印で“証拠の女王”に
(前略)警察は、話をしたこともなければ、同意したこともない「供述調書」という名の「警察製作文」を勝手に事前作成してその末尾に署名・押印(指印)させようとします。(後略)
「取調室の心理」
(前略)強い口調で10時間以上も叱責されて、毎日毎日、深夜になっても解放されない状況を想像してください。結局、医療従事者は納得いかない調書に署名・押印して帰宅するのです。(後略)
第2回 医療事故冤罪――業務上過失致死罪における過失の有無(「JAMIC JOURNAL」2008年11月号掲載)より
医療事故冤罪
(前略)「被疑者取り調べ要領」という警察学校の講義のための文書には「粘りと執念をもって『絶対に落とすという気迫』が必要」「取調室に入ったら自供させるまで出るな」「否認被疑者は朝から晩まで取調室に出して調べよ」といった指示があり、元検察幹部が書いた検察官向けの医事犯罪捜査実務専門書には「社会的な影響の大きい事件等、状況によっては、たとえ裏付け資料が不十分でも立件して捜査を遂げるべき事件もある」と堂々書かれています。(後略)
第3回 事情聴取――「取り調べ」は通常の会話ではない(「JAMIC JOURNAL」2008年12月号掲載)より
敵陣に一人で入る
日本では、捜査機関の取り調べの際に弁護士の立会いが認められません。知り合いのアメリカ人にこの話をしたところ、仰天して「信じられない」「野蛮な国だ」という反応でした。(後略)
確実な記憶だけを話す
取り調べでは、確実な記憶だけを話します。(後略)
「取調べ」は通常の会話ではない
(前略)取調べは通常の会話ではありません。捜査官は自分がわからないこと、自分が創作したストーリーにそぐわない供述を聞くと、怒鳴ってその「ストーリー」を押し付けようとします。相手が激しく怒鳴っているのは困っている証拠ですから、醒めた態度で黙って雷嵐が過ぎるのを待てばよいのです。 (後略)
捜査官と人間関係を築くな! アンビバレンツの幻想を断ち切れ!
(前略)彼らにとって、被疑者はすでに有罪なのです。
第4回 事情聴取――医師の“良識”が狙われる(「JAMIC JOURNAL」2009年1月号掲載)より
優等生と「道徳の時間」
(前略)知らないことは「知らない」でよい。言えないことは言わなくてよい。黙っていてもよい。黙秘権・供述拒否権・自己負罪拒否は、憲法第38条で認められています。
医療者の論理と捜査官の心理
「ちゃんと話せば、医学的科学的論理を理解してもらえれば、わかってもらえる」との常識的な考え方が取り調べで通用すると思うのは大間違いです。(後略)