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Lancet誌から
侵襲的治療が必要な急性冠症候群にはクロピドよりticagrelor
フェーズ3 PLATO試験のサブ解析結果

 急性冠症候群患者を対象として、クロピドグレルticagrelorの安全性と有効性を比較したフェーズ3 PLATO試験のサブグループ解析が行われた。PCIまたはCABGといった侵襲的治療が予定された患者のみを対象にこれら2剤を比較した結果、ticagrelor投与群の方が心血管死亡、全死因死亡、心筋梗塞、ステント血栓症などのリスクが低いこと、大出血リスクには差はないことが明らかになった。米Brigham and Women's HospitalのChristopher P Cannon氏らが、Lancet誌2010年1月23日号に報告した。

 急性冠症候群(ST上昇型または非ST上昇型)患者には、心筋梗塞とステント血栓症の予防を目的として、アスピリンと共にクロピドグレルを用いることが推奨されている。だが、チエノピリジン系抗血小板薬であるクロピドグレルの血小板凝集抑制作用は不可逆的で、その効果には個人差があるため、最適な用量と投与のタイミングについては議論がある。

 ticagrelorは、クロピドグレルと同様にADP受容体P2Y12に対する阻害薬だが、非チエノピリジン系で、作用は可逆的かつ強力だ。

 この無作為化二重盲検ダブルダミー試験PLATOでは、先に、広範な急性冠症候群患者を対象とする分析が行われ、クロピドグレルと比べてticagrelorは大出血リスクを上昇させないこと、心血管死亡と総死亡、心筋梗塞、ステント血栓症を予防する効果は有意に高いことが明らかになっている。

 著者らは今回、この試験のサブグループ解析の1つとして、侵襲的な治療(PCIまたはCABG)を予定された患者群を対象に、これら2剤の有効性と安全性を比較した。

 PLATOは、06年10月11日から08年7月18日までの間に、43カ国の862医療施設で、症状発現から24時間以内の急性冠症候群(ST上昇または非ST上昇型)患者を登録した。

 入院した1万8624人のうち、無作為化の際に侵襲的な治療が予定されていたのは1万3408人(72.0%)。うち49.1%はST上昇型心筋梗塞の患者で、残りの50.9%は非ST上昇型心筋梗塞、不安定狭心症、その他の急性冠症候群の患者だった。

 1万3408人の患者は1:1で、ticagrelor (負荷用量は180mg、その後90mgを1日2回)+クロピドグレル偽薬(6732人、年齢の中央値は61.0歳、女性は25.2%)、またはクロピドグレル(負荷用量は300~600mg、維持用量は75mg/日)+ticagrelor偽薬(6676人、61.0歳、女性は25.3%)のいずれかに割り付けられ、経口投与を受けた。投与は6~12カ月間継続した。

 全員にアスピリン75~100mgを投与した。

 主要エンドポイントは、血管疾患による死亡(心血管疾患と脳血管疾患による死亡と、血管系以外の疾患による死亡であることを示す明確な記述がない場合)、心筋梗塞、脳卒中を合わせた複合イベントに設定した。2次エンドポイントは、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中を合わせた複合イベントなどに、安全性のエンドポイントはTIMI分類に基づく大出血、GUSTO分類に基づく重症出血などに設定。分析はintention-to-treatで、Cox比例ハザードモデルを用いて行った。

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