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医師のドクターフィーを切り離せ
和田眞紀夫(わだ内科クリニック院長、東京女子医大非常勤講師)

2010/02/05

 アメリカ留学中の経験談からご紹介したい。留学中に家内はアメリカで子どもを出産した。主治医の産婦人科医はウェストコーストにオフィス(いわゆる日本の診療所)があり、かかりつけ患者となるときにまとめてドクターフィーを払った。これはいわゆる医師に対する技術料で、医師によってその額はまちまちだ。

 いい医者を選ぶとドクターフィーは高くなるが、患者の意思で安い医者を選ぶこともできる。ところで出産自体は総合病院(何ヵ所かの病院から選択可能)でおこなわれるが、分娩を含めたすべてのマネージメントは(病院と契約関係にある)主治医が責任を持って行う。

 主治医はいわゆる病院の常勤医ではないのだが、契約した病院で常勤医と同様の医療行為が行ええるシステムになっている。その代わり一切の責任も主治医が負っていることになる。出産に関わる諸費用は二重払いをする方式になっており、病院側への入院・分娩に関わるコスト代とは別に医師に対しては技術料を支払う。

 また、麻酔科医に対しても病院への支払いとは別にドクターフィーを支払った。つまり医師の技術料というものが、独立していて確実に確保されているのだ。この方法が理想的かどうかはわからないが、少なくとも支払いの内訳が明快にされていて、透明ですっきりした支払いシステムになっているのは事実だ。

 今、診療報酬の外来再診料のことが問題となっているが、これはまさに医師の技術料の問題だ。これを保険点数で統制していることに大きな問題がある。ベテランの医師でも研修医でも、また時間をかけようが簡単に終わろうが医師の技術料は一律という、非常に単純な評価方式なのだ。

 この再診料を上げるとか下げるとか議論されているのだが、一言に医師の診療といっても非常に多様であるのだから、これを一括して評価することにそもそも無理がある。支払い体制・制度そのものを抜本改正して、医師の技術料をきちんと評価するシステムを構築すべきだ。そのためにはドクターフィーをホスピタルフィーから切り離すことが改革の第一歩だ。

 医師の技術料を独立の支払い体制にすることのメリットの一つは、医師の活動の場が広がることだ。非常勤医が病院で仕事が出来る環境が作られることは大きい。病院の医師不足がいわれる中、診療所や他の病院に帰属する医師が非常勤で堂々と病院で働けるようになったら、病院の医師不足も相当補われるようになる。

 現在それができない一つの要因は、非常勤医に給料を支払う余裕が病院にないからだ。医師への賃金体制が独立すれば、この問題の解決のために大きな前進となる。あとは事故を起こしたときの責任等の問題はあるが、これは病院が責任を取るよりも個々の医師が責任を取るほうが健全なかたちであり、病院と切り離すことでむしろ病院のリスク回避にもなるのだ。あとは法整備をすればよい。

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